ショート動画を始めましょう、という話は、3本目まではだいたいうまくいきます。撮ったばかりの素材があり、担当者に勢いがあり、社内の反応も返ってくる。止まるのは4本目からです。

止まる理由は、編集が難しいからではありません。次に何を出すかが決まっていないからです。1本目は企画の勝ちで、4本目に必要なのは仕組みのほうだった。だいたいこのあたりで、そう気づくことになります。

4本目で止まるのは、編集が理由ではない

止まる場所は、会社が違ってもよく似ています。素材が尽きるか、承認が返ってこなくなるか、数字を見ても続ける理由が説明できなくなるか。この3つのどれかです。

仕組みと言っても、大げさなものは要りません。素材と承認と指標の3つについて、始める前に決めておくだけです。決めずに始めた場合、4本目のあたりで同じことを、今度は疲れた状態で決めることになります。

本数は、素材の量から逆算する

60分の長尺素材1本からショート動画が3本取れ、撮影が月1回なら月4本が上限になることを示す図

月に8本、と先に決めてから素材を探すと、たいてい2か月目で破綻します。順番が逆だからです。

60分の収録から無理なく出せるのは3本ほどで、それ以上は同じ話の言い換えになります。素材が月に1回しか増えないなら、続けられる上限は月に4本前後です。本数を増やしたいなら、編集を速くするより先に、撮る回数を増やすことになります。

すでにある長尺素材

1本から取れる目安

向いている形式

セミナー・ウェビナーの録画

2〜3本

質問と回答をそのまま切り出す

社員インタビュー

3〜4本

質問ごとに1本

展示会・イベントの記録

1〜2本

会場の様子と製品説明を分ける

製品デモ・操作説明

2〜3本

操作の1手順で1本

対談・座談会

2〜3本

結論が言い切られている場面だけ

この本数は相場であって、規格ではありません。1本から5本も6本も取れると考えているなら、その素材は同じ話を角度だけ変えて出すことになりがちで、SNSの側でも同じ人に何度も表示されます。

まず数えるのは、これから撮るものではなく、すでに撮ってあるものです。セミナーの録画、社員インタビュー、展示会の記録、製品説明、社内イベント。長尺のまま眠っている素材が何本あるかで、最初の3か月の本数は決まります。長尺から使える場面を探す工程は、AIで短くできる部分でもあります。

承認で止まる前に、NGを先に書く

本数が増えたときに最初に詰まるのは、編集ではなく確認です。毎回1本ずつ上長が全編を見る運用は、週1本なら回りますが、週3本では回りません。

効くのは、確認する人を増やすことではなく、確認しなくてよい状態を作ることです。言ってはいけない数字、写ってはいけない画面、使わない表現、社名や製品名の表記。この一覧を先に作っておけば、確認は例外が出たときだけになります。

一覧そのものは半日で作れます。完璧なものを目指す必要はなく、運用しながら足していくほうが実態に合います。書いていないルールで差し戻された回数を数えて、その都度足す。それだけで、3か月後には確認の往復がかなり減っています。

誰が決めるかを、先に書いておく

素材を持つ人から作る人へ依頼が渡り、公開を決める人の確認で止まりやすいことを示す図

登場する役割は3つです。素材を持っている人、作る人、公開してよいと決める人。

3つが同じ人なら速い。ただ、素材の持ち主が事業部にいて、作る人が広報にいて、決める人が別にいる、という配置のほうが普通です。このとき決めておくのは、素材を依頼する窓口と、その依頼にどれくらいで返すかの目安です。毎回ゼロから交渉して素材を取りに行く運用は、担当者が代わった時点で止まります。

外部の制作会社に頼む場合も同じで、増えるのは工程ではなく、待ち時間のほうです。

再生数だけでは、続けるかどうかを決められない

3か月続けたあと、続けるかどうかを判断する場面が来ます。ここで再生数だけを持っていくと、話は決まりません。

再生数は投稿の時間帯や形式で大きく揺れます。1本が跳ねたことも、1本が沈んだことも、その形式の良し悪しを示してはいません。見るなら、同じ形式で10本出したあとの中央値です。

中央値で見ると、跳ねた1本ではなく形式の実力が見えます。10本のうち上位2本を外して真ん中を取る、という程度の粗い扱いで十分です。細かく測るより、同じ測り方を3か月続けるほうが判断には効きます。

そのうえで、指標をSNSの外側にも置いてください。採用が目的なら応募時に聞いている認知経路、展示会が目的なら来場者が動画に触れた回数、営業が目的なら商談でその動画を送った件数。数えるのが面倒な指標ほど、続ける理由の説明には効きます。

内製と外注の分かれ目は、本数ではない

月に何本を超えたら内製、という線引きをよく見ますが、実務ではあまり当たりません。効いてくるのは差し戻しの回数です。

差し戻しが多いのは、仕様が固まっていないという意味です。この状態で外注すると、往復のたびに費用と日数が積み上がります。逆に、出す形が決まっていて本数だけが多いなら、手元で回すほうが速い。まず数本を自分たちで作って型を決めてから、量が要る部分だけを外に出す順番になります。

手元で回すと決めたなら、道具の選定はそのあとです。工程のどこが重いかによって、選ぶツールの性格は変わります字幕の付け方も同じで、音を出さずに再生されることを前提にすると、字幕は装飾ではなく本文になります。

なお、1本ずつ丁寧に作るPR動画とショート動画では、決めるべきことの順番が違います。置き場所から逆算して1本を設計する話は、別に整理しました。

NAXAの取り組み

NAXAのAIショート動画生成は、長尺からの盛り上がりシーンの自動検出、縦型への編集、BGMとテロップの挿入までを扱い、SNS運用までを含めた形で提供しています。作業時間としては9割以上を削れた例がありますが、削れるのは探す工程と整える工程で、承認と指標の設計は残ります。

素材はたいてい、もう社内にあります。足りないのは編集の速度ではなく、来月それが何本増えるかの見通しのほうかもしれません。次の3か月で、撮影の予定は何回入っているでしょうか。