1時間の収録から30秒を選ぶ。この作業を誰かに任せるとしたら、どこまで任せられるでしょうか。
尺を詰めるだけなら機械のほうが速い。ただ、どこが面白いかの判断は別の話です。実際にツールを触ってみると、この2つが混ざったまま「自動」と呼ばれていることに気づきます。
ツールごとに自動の範囲が違う。選定の難しさは、機能表を並べても比べられないところにあります。
「自動」が指しているものが揃っていない
ショート動画生成AIと呼ばれるツールがやっている作業は、分解すると4つあります。長尺のどこを使うかを決める、その区間を切り出す、縦型の画角に収める、字幕を載せる。
このうち後半の3つは、区間さえ決まれば手続きです。難しいのは最初の1つで、ここを機械に任せられるかどうかがツールの性格を分けます。
区間の決定まで任せる設計のツールは、話の盛り上がりや文脈をモデルに判定させます。出てきた候補にスコアを付けて並べるものもあります。いっぽう、区間は人が指定して、そこから先の縦型化と字幕だけを自動化する設計のツールもあります。
後者を物足りないと見るかは、素材によります。1時間のトークから面白い30秒を探すなら前者が要る。会見の該当箇所がすでに分かっているなら、後者のほうが手数が少ない。
区間を決める側のツールが見ているのは、たいてい音声認識にかけたあとのテキストです。話題の切れ目、質問と回答の対、言い切りの強さ。そういう手がかりから候補を出して、伸びやすさの見込みをスコアとして添えます。
ここで注意が要ります。スコアは学習した傾向の反映であって、その番組の視聴者に効くかどうかの保証ではありません。上位から順に出していけば数は稼げますが、選んだ理由を説明できる状態にはならない。候補出しまでを任せて、採否は人が決める。実際の運用はだいたいそこに落ち着きます。
主要ツールの比較表
| ツール | 形態 | 区間の自動決定 | 縦型化 | 字幕生成 | 向いている素材 |
|---|---|---|---|---|---|
| Opus Clip | Webサービス | あり(スコア付き候補) | 自動 | 自動 | トーク、配信アーカイブ |
| Klap | Webサービス | あり | 自動 | 自動 | トーク、対談 |
| Vizard | Webサービス | あり | 自動 | 自動 | ウェビナー、インタビュー |
| Descript | 編集ソフト | あり | 対応 | 自動 | ポッドキャスト、収録もの |
| CapCut | 編集アプリ | 一部 | 自動 | 自動 | SNS運用、素材が手元にあるもの |
| Vrew | 編集ソフト | 一部 | 対応 | 自動 | 日本語のナレーションもの |
| Adobe Premiere Pro | 編集ソフト | 人が指定 | 自動リフレーム | 文字起こしから生成 | 既存の編集工程に載せる場合 |
| AIショート動画生成(NAXA) | 放送・制作向けサービス | あり | 自動 | 自動 | 番組素材、局の運用に載せる場合 |
価格は改定が多いので入れていません。無料枠のあるものが大半ですが、書き出し時間や本数で制限が付きます。
表の右端の列がいちばん実務に効きます。同じ機能を持っていても、想定している素材が違うと結果が変わるからです。
上の3つは、動画のURLかファイルを渡すとブラウザの中で完結する型です。手元に編集環境が無くても使えるかわりに、細かい調整は限られます。素材を外部へ渡すことが前提になる点も、この型の性格です。
DescriptとVrewは、文字起こしを先に作って、その文章を消すと映像も消えるという編集の仕方をします。話し言葉の「えー」や言い直しを文章の側から削れるので、収録ものの整理が速い。Vrewは日本語のUIを備えていて、国内では使っている人が多い部類です。
CapCutはSNS運用を前提にした編集アプリで、テンプレートと素材が揃っています。Premiere Proは既存の編集工程を持っている場合の選択肢で、自動リフレームと文字起こしベースの編集がソフトの中に入っています。編集済みのプロジェクトから続けて縦型を作れる点が、他とは違うところです。
縦型化は「切り取る」ではなく「追う」
横位置で撮った映像を縦にする作業は、単純な切り抜きではありません。画面の中で話している人が動けば、切り取る位置も動かす必要があります。
ツールが自動でやっているのは、被写体を検出して枠を追従させる処理です。1人が中央で話している映像なら、これはほぼ失敗しません。
崩れるのは複数人のときです。誰を追うかの判断が要るので、話者が切り替わるたびに枠が飛ぶことがあります。対談やスタジオものを縦型にすると、この不安定さが目に付きます。
対処としては、2人を横に積む分割レイアウトを選ぶか、枠の動きを止めて引きで固定するかになります。どちらも機能として持っているツールはありますが、どちらを選ぶかは自動では決まりません。
字幕の載せ方も同じで、自動生成された文字をそのまま出せるかは素材によります。AIによる字幕生成の工程で人手の確認が残るのと理由は同じで、固有名詞と数字は機械が間違えます。SNSに出すものでも、社名や商品名の誤りはそのまま残ります。
放送素材だと、選定の基準が変わる
ここまでは一般的な用途の話です。番組素材を扱う場合、判断の軸がいくつか増えます。
まず尺です。1時間のトークではなく、2時間の生放送や、数十本の過去回から探すことがあります。1本ずつアップロードして処理する形のサービスは、この量に向きません。
次に権利です。出演者や楽曲の権利範囲は場面ごとに違い、切り出してよい区間が制限されます。機械が選んだ候補をそのまま出すわけにいかず、確認の工程が必ず入ります。
そして素材の置き場所です。放送前の素材を外部のサービスへアップロードできるかは、局ごとの規定で決まります。放送素材をオンプレミスで扱う要件が先にあって、そこからツールの候補が絞られることも珍しくありません。
納品や書き出しの条件も付きます。SNSへ直接投稿するだけなら気にしなくてよいコーデックの指定が、局のアーカイブへ戻すときには効いてきます。書き出し形式の選択を誤ると、受け取り側で再生できないという事故につながります。
選ぶ基準は、自分の工程のどこが重いか
機能の多いツールが良いわけではない、という結論はつまらないので、もう少し具体に落とします。
長尺から探す時間が最も重いなら、区間の自動決定があるものを選ぶ。すでに使う場面が決まっていて縦型化と字幕だけが面倒なら、既存の編集環境に載る側を選ぶ。素材を外へ出せないなら、その時点で候補は絞られます。
ショート動画をAIで作る仕組みを理解しておくと、この判断は速くなります。どの工程を機械がやっているかが分かれば、自分の重い工程と突き合わせるだけで済むからです。
逆に言えば、工程のどこが重いかを測っていない状態でツールを比べても、決め手が出てきません。先週作った本数と、そのうち何分を素材探しに使ったか。その2つを出すところから始めたほうが早いはずです。
試すときに見るのは、出来上がりではない
無料枠を触るところまでは、たいていの担当者がやります。判断が割れるのは、そこで何を見たかです。
出来上がった1本の見栄えで決めると、あとで外します。テンプレートの字幕は最初はよく見えますが、毎日出していると自社の見え方に合わなくなる。見るべきなのは、10本作ったうち何本を直さずに出せたかという割合と、直した数本の直した箇所です。
直した箇所が画角なら、素材の撮り方を変えるほうが速いかもしれません。固有名詞の誤変換なら、用語を登録できるツールかどうかで手数が変わります。区間の選び方そのものが合わないのであれば、そのツールの判定はこの素材に向いていないという結論になります。
担当者が1人で完結しない前提も入れておいてください。作った候補を上長や広報に見せて、直しの指示を受けて、公開の可否を得る。この往復がツールの中で回るのか、書き出してから別の場所でやるのか。本数が増えるほど、この差が効いてきます。
NAXAの取り組み
NAXAのAIショート動画生成は、盛り上がりシーンの自動検出から縦型への編集、BGMとテロップの挿入までを扱います。放送局や制作会社の運用に載せることを前提にしていて、SNS運用までを含めた形で提供しています。