WHIP

WebRTC-HTTP Ingestion Protocol / ウィップ

WebRTCで配信サービスやメディアサーバーへ映像を送り込むときの、接続手順を決めたIETFの規格です。HTTPのリクエストを送るだけで接続でき、RTMPの代わりに1秒未満の遅延で映像を打ち上げられます。

正式名称
WebRTC-HTTP Ingestion Protocol
策定団体
IETF
規格番号
RFC 9725(2025年3月)
使うHTTPメソッド
POST(接続の開始)、PATCH(ICE情報の更新)、DELETE(終了)
交換する情報
SDPのオファーとアンサー
認証
Bearerトークン(RTMPのストリームキーに当たる)
対応する送信ソフトの例
OBS Studio 30 以降
視聴側の対になる仕様
WHEP(WebRTC-HTTP Egress Protocol)

OBSの配信先に「WHIP」という選択肢が増えて、何が変わるのか分からないという人は多いはずです。WHIPは、これまで配信サービスごとにばらばらだったWebRTCの接続手順を1つにそろえた規格です。RTMPと同じように「URLとトークンを入れて配信開始を押す」だけで、WebRTCの低遅延配信が始められます。

WHIPが使われる場面

いちばん身近なのは、OBS Studioからの配信です。OBS Studio 30.0でWHIPの出力が加わり、Cloudflare StreamのようなWHIPに対応した配信サービスへ、ブラウザを介さずにWebRTCで映像を送れるようになりました。その後の30.1ではAV1での送信にも対応しています。

受ける側では、MediaMTXのようなメディアサーバーやGStreamerにもWHIPの実装があり、自前の配信基盤を組む場合にも使えます。視聴者との時差を1秒未満に抑えたいライブコマース、オークション、視聴者参加型の番組などで、打ち上げをRTMPからWHIPに替える構成が検討されています。

WHIPの仕組み

手順は短く、HTTPのやり取りだけで完結します。送信側(WHIPクライアント)は、自分が送れるコーデックなどを書いたSDPのオファーを、配信サービスのエンドポイントURLへPOSTします。このとき、Authorizationヘッダーに発行済みのBearerトークンを付けます。

サーバーは「201 Created」とともにSDPのアンサーを返し、Locationヘッダーでこの配信セッションを表すURLを知らせます。あとはICEとDTLSで接続が確立し、映像と音声が送信側から一方向に流れます。配信を止めるときは、そのセッションのURLにDELETEを送ります。接続後にコーデックの構成を変える再交渉は認められておらず、PATCHで更新できるのはICEの情報だけです。

WHIPの設定で間違えやすい点

RTMPの感覚で設定すると、次の点で引っかかりやすくなります。

  • 入力する項目はエンドポイントURLとBearerトークンの2つで、RTMPのように「サーバー」と「ストリームキー」を分けて入れる形ではない
  • 音声はOpusで送る。RTMPで使ってきたAACはWebRTCでは扱われない
  • 映像コーデックは受ける側の対応に合わせる。H.264は広く通るが、AV1やHEVCは受信側が対応していないと接続できない
  • 社内ネットワークなどでUDPが塞がれていると、HTTPのやり取りは成功しても映像が流れない

WHIPとRTMP・WHEPの違い

RTMPはTCPで確実に届ける代わりに、視聴者までの遅延が数秒以上になります。WHIPはWebRTCの上で動くので、視聴側もWebRTCで配れば全体を1秒未満に収められます。WHEPは同じ考え方を視聴側に当てはめた仕様で、プレイヤーがHTTPで接続してWebRTCの映像を受け取ります。

よくある質問

WHIPとWHEPの違いは何ですか

WHIPは配信サーバーへ映像を送り込むとき、WHEPは配信サーバーから映像を受け取るときの接続手順です。どちらもHTTPでSDPを交換してからWebRTCで映像を流す点は共通しています。

OBSでWHIP配信するにはどうすればよいですか

設定の「配信」でサービスに「WHIP」を選び、配信サービスから発行されたサーバーURLとBearerトークンを入力します。WHIPの出力は音声にOpusしか使えず、AACを選んでいるとOpusへの切り替えを確認する画面が出ます。配信サービスがOpusを受け付けるかを先に確かめておきます。

WHIPで配信するとRTMPより画質が良くなりますか

画質はコーデックとビットレートで決まるので、WHIPにしただけで上がるわけではありません。WebRTCは回線が混むとビットレートを下げて遅延を守るため、回線が細いとRTMPより画質が揺れることもあります。

似ている形式との違い

名前主に使う場面WHIPとの違い
RTMP従来の配信の打ち上げTCPで送るため数秒の遅延が前提。対応するサービスと機器の数ではまだRTMPが多い
WebRTC低遅延の双方向通信映像を運ぶ技術そのもの。WHIPはWebRTCで送り始めるための接続手順だけを定めている
SRT中継・局間の素材伝送遅延量を決めて再送する伝送向けの方式。ブラウザでは扱えないが、放送機器の対応が多い

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