IGMP
Internet Group Management Protocol / アイジーエムピー
IPv4のマルチキャストで、受け手が「このグループの映像を受け取りたい」とネットワークに申告するためのプロトコルです。ST 2110の設備やIPTVでは、これが正しく動かないと映像がまったく届きません。
- 正式名称
- Internet Group Management Protocol
- 規格
- IGMPv2はIETF RFC 2236、IGMPv3はRFC 3376
- 役割
- IPv4のマルチキャストグループへの参加(Join)と離脱(Leave)をルーターに伝える
- IGMPv3の主なメッセージ
- Membership Query(0x11)、Version 3 Membership Report(0x22)
- IGMPv3のレポート宛先
- 224.0.0.22(IGMPv3対応のマルチキャストルーターが待ち受ける)
- 送信元を指定する仕組み
- SSM(RFC 4607)。IPv4のSSM用アドレスは232.0.0.0/8
- IPv6での相当機能
- MLD。MLDv2がIGMPv3に相当する
- 放送設備での要件
- JT-NM TR-1001-1はIGMPv3対応と、SDPに送信元アドレスがある場合のSSM利用を求めている
IP化した設備で映像が受け手に届かないとき、PTPやSDPより先に疑うべきなのがIGMPです。マルチキャストの映像は、受け手が「このグループを受け取りたい」と申告しない限り自分のポートには流れてきません。その申告を運ぶのがIGMPで、スイッチの設定が1つ抜けているだけで絵が出なくなります。
IGMPが使われる場面
ST 2110の設備では、カメラやスイッチャーの出力が1本ずつマルチキャストのアドレスへ流れています。マルチビューワーや音声卓がその映像を受けるとき、機器はIGMPで参加の申告を出します。NMOS IS-05で受け手にSDPを渡すと、受け手はそこに書かれたマルチキャストアドレスへ参加を申告する、という順序で接続が成立します。制御システムのパネル上では1回のクロスポイント操作でも、ネットワークの中ではIGMPの離脱と参加が起きています。
IPTVの配信でも同じ仕組みです。STBがチャンネルを切り替えるたび、前のチャンネルのグループを離脱し、新しいグループへ参加します。チャンネル切り替えの体感速度は、この処理がネットワーク機器でどれだけ速く効くかに左右されます。
設備の調達仕様に「IGMPv3対応、IGMPスヌーピング対応」と書かれるのは、この2つが欠けるとマルチキャストが全ポートに漏れて帯域を食いつぶすか、必要なポートに届かないかのどちらかになるためです。
IGMPの仕組み
受け手はMembership Reportで参加したいグループを申告し、ルーターはそれを受けてそのポートへ転送を始めます。ルーターは定期的にMembership Queryを投げ、まだ見ている機器がいるかを確かめます。応答が絶えるとそのポートへの転送を止めます。同じセグメントに複数のルーターがいる場合は、IPアドレスの小さいものがクエリアに選ばれ、Queryを出す役を引き受けます。
IGMPv3で加わったのが送信元の指定です。v2では「グループGを受け取りたい」しか言えませんでしたが、v3では「送信元SからグループGへ来るものだけ」と絞れます。この形を前提にした運用がSSM(Source-Specific Multicast)で、送信元とグループの組(S,G)を1つのチャンネルとして扱います。同じグループアドレスを別の送り手が使っても混ざらないので、アドレスの管理が楽になります。
L2スイッチはIGMPを読まないと、マルチキャストをブロードキャストと同じように全ポートへ配ってしまいます。IGMPスヌーピングは、スイッチがIGMPのやり取りを覗いて、どのポートにどのグループの受け手がいるかを表にする機能です。
IGMPの設定で間違えやすい点
現場で起きるつまずきは次の通りです。
- セグメントにクエリアがいない。L3のない閉じたネットワークでスヌーピングだけ有効にすると、Queryを出す機器がなく、時間が経つと転送が止まる。スイッチのIGMPクエリア機能を有効にする
- 機器がIGMPv3、スイッチやルーターがv2で動いている。バージョンの取り決めがずれると、SSMの指定が効かず送信元の絞り込みができない
- Fast Leave(即時離脱)を入れていない。離脱の反映が遅れ、切り替え時に旧ストリームの帯域が残る
- SDPに送信元アドレスが書かれていない。受け手がSSMで参加できず、同じグループアドレスの別ストリームを拾う余地が残る
- 1本の1080p非圧縮が約1.5Gbpsある。参加の申告が漏れて同じ映像が複数の経路に流れると、10GbEの上り口が一気に埋まる
IP化の全体像はMedia over IPとは?SMPTE ST 2110とNMOSで進む放送IP化を解説で扱っています。
よくある質問
IGMPv2とIGMPv3の違いは何ですか
v2は受け取りたいグループだけを申告します。v3では送信元アドレスも指定でき、「この送り手から来るものだけ」と絞り込めます。ST 2110の設備ではIGMPv3が前提で、JT-NM TR-1001-1もメディアノードにIGMPv3対応を求めています。
IGMPスヌーピングは必須ですか
マルチキャストで映像を流すネットワークでは、実務上ほぼ必須です。スヌーピングがないスイッチはマルチキャストを全ポートへ配るため、非圧縮映像を扱う設備では帯域がすぐに足りなくなります。
SSMとは何ですか
送信元とグループの組で受信するマルチキャストの使い方です。RFC 4607で定められており、IPv4では232.0.0.0/8のアドレス範囲が割り当てられています。参加にはIGMPv3が必要です。
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似ている形式との違い
| 名前 | 主に使う場面 | IGMPとの違い |
|---|---|---|
| PIM | ルーター同士のマルチキャスト経路 | 受け手とルーターの間を受け持つのがIGMP。ルーター間で配送経路を作るのがPIM |
| IGMPスヌーピング | L2スイッチでの転送制御 | スイッチがIGMPのやり取りを覗いて必要なポートだけに流す機能。プロトコルそのものではない |
| MLD | IPv6のマルチキャスト参加 | IPv6で同じ役目を果たすプロトコル。MLDv2がIGMPv3にあたる |
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