配信・伝送送出配信

ATSC

Advanced Television Systems Committee / エーティーエスシー

北米のデジタル放送の規格と、それを作っている団体の名前です。従来のATSC 1.0は8VSB変調とMPEG-2映像、第2世代のATSC 3.0はOFDMとIP伝送を土台にしており、同じ地上波の中で世代が入れ替わりつつあります。

策定団体
Advanced Television Systems Committee(ATSC)
ATSC 1.0の中心の規格
A/53(パート構成。パート4はMPEG-2映像のシステム特性)
ATSC 1.0の変調と伝送容量
8VSB。最大19.39Mbps
ATSC 1.0の音声
A/52(AC-3)
ATSC 1.0の字幕
CEA-708方式のクローズドキャプション(A/53 Part 4がCEA-708を参照)
ATSC 3.0の全体規格
A/300(ATSC 3.0 System)
ATSC 3.0の物理層
A/321(System Discovery and Signaling)とA/322(Physical Layer Protocol)。OFDMを使う
ATSC 3.0の伝送と制御
A/331(信号の伝送・同期・誤り保護)。IPベースの配送を規定する
ATSC 3.0の映像・音声・字幕
A/341(HEVC)、A/342(AC-4とMPEG-H)、A/343(Captions and Subtitles)

米国向けに番組や配信の仕様を書くとき、ATSCの何を指しているのかで内容が変わります。ATSC 1.0とATSC 3.0は、変調から映像コーデック、字幕の形式まで別物です。現在の北米の地上波では、この2つが並行して放送されています。

ATSCが使われる場面

米国、カナダ、韓国、メキシコなどの地上デジタル放送の方式です。北米向けに番組を納品する案件では、字幕の指定がCEA-608またはCEA-708になり、日本のARIB STD-B24の字幕はそのまま使えません。字幕データをSCCやMCC、あるいは映像の補助データ領域へ載せた形で渡す作業が発生します。

放送機材の側では、米国向けのエンコーダーや多重化装置の仕様書にATSCの文書番号が並びます。AC-3の音声、PSIPと呼ばれる番組情報、キャプションの埋め込みの扱いが、日本のISDB-T向けの装置とは別に用意されます。

ATSC 3.0は、放送波の中身をIPパケットで運ぶ設計になっているため、配信側の技術と地続きです。映像はHEVC、伝送はROUTE-DASHとMMTを使うので、配信基盤を作ってきたエンジニアにとっては読みやすい規格群になっています。北米では従来の1.0の放送を残しながら3.0を並行して出す運用が取られています。

ATSC 1.0とATSC 3.0の仕組みの違い

ATSC 1.0は、8VSBという変調で1チャンネルあたり最大19.39MbpsのMPEG-2 TSを運びます。映像はA/53のパート構成でMPEG-2として規定され、音声はA/52のAC-3、字幕はCEA-708方式のクローズドキャプションです。1つの電波の中を複数のサブチャンネルに分けて使う運用が北米で広く行われています。

ATSC 3.0は、全体をA/300が束ね、物理層をA/321とA/322が定めます。変調はOFDMに変わり、物理層の資源の使い方を柔軟に組み合わせられる設計になっています。A/331が信号の伝送、同期、誤り保護をまとめ、ここでIPベースの配送が入ります。

映像はA/341がHEVCの制約を定め、より新しい世代としてVVCを扱うA/345もあります。音声はA/342がパートに分かれ、AC-4とMPEG-Hの2系統を認めています。字幕はA/343が、ROUTE-DASHとMMTの上で字幕トラックを扱う方式を定めています。放送と配信で同じ字幕データを使える設計です。

ATSCとISDB-T・DVBの違い

地上波の3方式は、変調と字幕で分かれます。ATSC 1.0は8VSB、DVB-TはCOFDM、ISDB-TはOFDMを13セグメントに分ける方式です。ISDB-Tのセグメント分割はワンセグを同じ電波で送るための工夫で、ATSC 1.0にはこれに相当する仕組みがありません。

字幕はATSCがCEA-608とCEA-708、DVBがDVB字幕とテレテキスト、ISDB-TがARIB STD-B24で、どれも互換がありません。海外の番組を国内で放送するときや、日本の番組を海外へ出すときに字幕を作り直す必要が出るのはこのためです。

第2世代同士を比べると、方向が近づきます。ATSC 3.0はIPとMMT・DASHを使い、日本の4K・8K衛星放送もMMT・TLVを採用しました。多重化の土台がMPEG-2 TSからIPパケットとMMTへ移ったという点は、両者で共通しています。

よくある質問

ATSC 3.0とNextGen TVは同じものですか

NextGen TVは、ATSC 3.0に対応した受信機や放送を米国の業界が視聴者向けに呼ぶときの名前です。規格そのものを指す名前がATSC 3.0で、文書番号はA/300の系列にまとまっています。

日本のテレビでATSCの放送は受信できますか

受信できません。変調方式も番組情報の運用も違うため、国内向けのチューナーでは復調できません。逆に米国向けのテレビで日本の地上デジタル放送を見ることもできません。

ATSCの字幕はSRTに変換できますか

CEA-608やCEA-708の字幕データを取り出せれば、テキストの字幕形式へ変換できます。ただし708は色や表示位置、フォントの指定を持つため、SRTに落とすとその情報は失われます。表示位置を残したい場合は、位置指定を持つ形式を選びます。

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名前主に使う場面ATSCとの違い
ISDB-T日本・ブラジルなどの地上デジタル放送OFDMを13セグメントに分ける方式で、ワンセグを同じ電波で送れる。字幕はARIB STD-B24
DVB欧州を中心とした地上・衛星・ケーブル放送伝送路ごとに規格が分かれた規格群。地上波はCOFDMで、字幕はDVB字幕かテレテキスト
CEA-708北米のクローズドキャプションATSC 1.0の中で字幕の中身を定めている規格。ATSC全体を指す語ではない

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