DVB-T2
Second generation digital terrestrial television broadcasting system / ディーブイビーティーツー
欧州で策定された第2世代の地上デジタル放送の伝送方式です。ETSI EN 302 755として2009年に発行され、LDPCによる誤り訂正と256QAM、32kのOFDMによって、従来のDVB-Tから最大で5割近く伝送容量を増やしました。
- 規格
- ETSI EN 302 755(初版は2009年)
- 実装ガイドライン
- ETSI TS 102 831
- 策定団体
- DVB Project
- 変調
- COFDM。搬送波の配置はQPSK、16QAM、64QAM、256QAM
- OFDMのモード
- 1k〜32k。ガードインターバルは1/128から1/4まで
- 誤り訂正
- LDPCとBCHの連接。符号化率は1/2、3/5、2/3、3/4、4/5、5/6
- チャンネル幅
- 1.7、5、6、7、8、10MHz
- 容量
- MFN運用でDVB-Tに対して最大5割近い増加
- 特徴的な機能
- PLP(物理層パイプ)ごとの頑健性の切り替え、回転コンスタレーション、MISO
海外向けの機器の仕様欄に「DVB-T2対応」と書かれていても、日本のテレビでそのまま地上波が受かるわけではありません。DVB-T2は欧州で作られた地上波の伝送方式で、日本のISDB-Tとは電波の作り方から違います。同じ地上デジタルという言葉でくくられていても、受信機の互換はありません。
DVB-T2が使われる場面
英国、ドイツをはじめとする欧州各国、アフリカ、アジアの多くの国で、DVB系の地上デジタル放送の伝送方式として採用されています。第1世代のDVB-Tから移行した国が多く、同じ帯域でハイビジョンや4Kのチャンネルを増やす目的で導入されました。
機器の側では、海外向けのテレビ、チューナー、STB、業務用の送信機や測定器の仕様にDVB-T2の対応が並びます。日本のメーカーが輸出向けに作る受信機や、放送設備を海外へ納める案件では、日本国内向けとは別にこの方式への対応が求められます。
放送局の運用としては、1つの多重化の中に頑健性の違うチャンネルを混在させる使い方があります。固定受信向けのハイビジョンは効率を優先した設定で、移動受信向けのチャンネルは誤りに強い設定で、同じ電波の中に同居させられます。これを可能にしているのがPLPという単位です。
DVB-T2の仕組みとDVB-Tとの違い
DVB-T2はDVB-Tと同じCOFDMの系統ですが、各部が広げられています。ITU-Rの報告書は違いを次のように整理しています。
- 誤り訂正をLDPCとBCHの連接に変え、変調に256QAMを加えたことで、25〜30%の容量増
- OFDMの搬送波数を8kから32kへ増やし、SFNでガードインターバルを1/4から1/16にできるようにしたことで、約18%のオーバーヘッド削減
- 1/128、19/256、19/128という新しいガードインターバルの選択肢
- ガードインターバルに合わせた分散パイロットの最適化と連続パイロットの削減で、約10%のオーバーヘッド削減
- 帯域の拡張。8MHz幅では7.61MHzだった有効帯域が7.77MHzになる
これらを合わせると、MFN運用でDVB-Tに対して最大5割近い容量増になり、SFNではそれ以上になるとされています。加えて、高い符号化率でも受かりやすくする回転コンスタレーション、送信機の電力増幅の効率を上げるPAPR低減、Alamouti符号を変形したMISO送信といった機能が用意されています。
PLP(物理層パイプ)は、1つの電波の中に独立したデータの流れを複数持てる仕組みです。流れごとに変調と符号化率を変えられるので、チャンネルごとに必要な頑健性とビットレートを選べます。時間軸のスライスと組み合わせると、受信機は自分が必要なPLPの区間だけ動けばよくなり、消費電力を下げられます。
DVB-T2で間違えやすい点
- DVB-T2対応の受信機でDVB-Tの放送を受けられるかは実装次第です。両対応の製品が多いものの、規格として自動的に互換になるわけではありません
- 日本のISDB-Tとは互換がありません。海外で買ったDVB-T2対応テレビを日本に持ち込んでも地上波は受かりません
- DVB-T2は伝送方式の規格で、映像の圧縮方式は別に決まります。同じDVB-T2の国でもH.264の国とHEVCの国があり、受信機の対応が分かれます
- パラメータの組み合わせが非常に多いため、送信側の設定を1つ変えるだけで受信機側の必要C/Nが変わります。ITU-RやEBUの計画資料に載った条件と、実際の網の条件を混同しないことが大切です
よくある質問
DVB-T2と日本の地デジは互換がありますか
ありません。日本の地上デジタル放送はISDB-Tで、6MHzのチャンネルを13のセグメントに分けるBST-OFDMという構成を取っています。DVB-T2はセグメントの分割を持たず、PLPという別の単位で頑健性を切り替えます。受信機も送信機も共用できません。
DVB-T2は4Kを送れますか
伝送方式としては十分な容量を確保できます。実際に4Kを送っている国では、DVB-T2の上でHEVCを使う構成が取られています。何を送るかは伝送方式ではなく、その国の運用規定と受信機の対応で決まります。
DVB-T2とATSC 3.0はどちらが新しいですか
ATSC 3.0のほうが後の世代です。ただしATSC 3.0もOFDMとLDPCを採用しているため、物理層の考え方はDVB-T2に近くなっています。大きな違いは、ATSC 3.0がIPによる伝送を前提にしている点です。
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