JT-NM TR-1001-1
System Environment and Device Behaviors for ST 2110 Media Nodes in Engineered Networks / ジェイティーエヌエムティーアールセンイチイチ
ST 2110の機器を「つないで電源を入れれば設備に組み込める」状態にするため、ネットワーク側が用意すべきサービスと機器側の振る舞いを取り決めたJT-NMの技術勧告です。IP設備の調達仕様でよく引き合いに出されます。
- 正式名称
- System Environment and Device Behaviors for ST 2110 Media Nodes in Engineered Networks
- 発行
- JT-NM(AMWA、EBU、SMPTE、VSFの合同タスクフォース)
- 版
- TR-1001-1:2020 v1.1(2020年11月11日発行、19ページ)
- 位置づけ
- 規格ではなく技術勧告。下敷きの規格より厳しい条件を足している箇所がある
- 引用する主な仕様
- SMPTE ST 2110-10、AMWA IS-04 v1.2、IS-05 v1.0、IS-09 v1.0、IS-08 v1.0、IEEE 1588-2008、SMPTE ST 2059-1/2
- ネットワーク側に求めるもの
- DHCP、ユニキャストDNSとDNS-SD、IS-09のSystem API、IS-04レジストリ、各メディアネットワークでのPTP
- マルチキャスト
- IGMPv3対応。SDPに送信元アドレスがあればSSMで参加する
- v1.1が扱っていない範囲
- セキュリティ、監視、構成管理(今後の課題として明記されている)
ST 2110とNMOSの規格を全部そろえても、機器をつないだ瞬間に設備として動くとは限りません。IPアドレスの取り方、レジストリの見つけ方、電源を入れ直したときの振る舞いまで決めておかないと、現場では人が1台ずつ設定することになります。TR-1001-1はその「規格の隙間」を埋めるための文書です。
TR-1001-1が使われる場面
いちばん多いのは調達です。放送局や中継車の設備更新で出る仕様書に「JT-NM TR-1001-1準拠」と書かれ、メーカー側はそれを満たす実装で応じます。文書の狙いは、利用者が新しい機器を受け取ってネットワークにつないだあと、人が触るのは「その機器の存在を承認すること」「信号に運用上の名前を付けること」「他の信号との組の関係を決めること」だけで済む状態にすることです。タイミングや伝送、経路の設定は自動で決まる設計になっています。
相互接続の確認にも使われます。JT-NM Testedの枠組みでは、参加した機器がTR-1001-1に沿った振る舞いをするかが試験項目に入り、結果が公開されます。機種選定のとき、この報告書とEBU TECH 3371の要求項目を並べて確認する局は少なくありません。
TR-1001-1が求める仕組み
ネットワーク側には、メディアノードを支えるサービスを用意することが求められます。DHCPはサブネットマスクやルーター、DNSサーバーなどを配り、機器はホスト名のオプション(option 12)を要求して、返ってこなければ自分で一意な名前を作ります。レジストリとSystem APIの場所はユニキャストのDNS-SDで見つけます。PTPは各メディアネットワークで提供し、IEEE 1588-2008とST 2059-2のプロファイルに沿わせます。
機器側にも具体的な振る舞いが指定されています。主なものは次の通りです。
- IS-04 v1.2以上のNode APIを出し、レジストリに登録して定期的な死活確認を続ける
- IS-05 v1.0以上の接続管理APIを出す。接続は必ずRTPのtransport_paramsとIPv4マルチキャストで行う
- 各メディアネットワークのポートでLLDPを話し、IS-04のインターフェース情報のport_idにそのポートのMACアドレスを入れる
- 製品の寿命を通じて変わらないUUIDをIS-04に出す。再起動や電源断、ソフト更新をまたいでも同じ値にする
- 既定ではグランドマスターの役を引き受けない。PTPのドメイン番号とパラメータはIS-09のSystem APIから受け取った値を使う
- ST 2022-7で2経路にする機器は、IS-04のinterface_bindingsの1番目とIS-05のtransport_paramsの1番目を対応させる
起動時の扱いも決まっています。IS-09のSystem APIが持つSystem IDは施設ごとに一意に割り当てられ、機器はそれとDHCPで得たアドレスを保存しておきます。再起動のときに両方が前回と一致すれば前の設定を使ってよく、一致しなければ送信を止めた状態(master_enableをfalse)で立ち上がり、IS-04には出したままIS-05で設定を待ちます。レンタル機材が別の現場に持ち込まれたとき、前の現場のアドレスへ映像を撒き始めるのを防ぐ仕掛けです。
TR-1001-1準拠で間違えやすい点
準拠をうたう機器でも、実際に確認すべき点が残ります。文書が引用しているのはIS-04 v1.2とIS-05 v1.0という下限で、より新しい版を出すことが推奨されているだけなので、組み合わせる機器どうしの版が一致するとは限りません。ネットワーク側の宿題も見落とされがちです。DHCPとDNS、System API、レジストリがそろっていない環境では、機器がどれだけ準拠していても自動では立ち上がりません。
もう1つ押さえておきたいのは範囲です。v1.1の本文には、この版ではセキュリティ、監視、構成管理を扱わないと明記されています。TLSや認可の設計はNMOSのBCP-003など別の文書で補う必要があります。
よくある質問
TR-1001-1は規格ですか
規格ではなく技術勧告(Technical Recommendation)です。AMWA、EBU、SMPTE、VSFが共同で作っており、既存の規格をまとめ直したうえで、設備として組みやすいように条件を絞り込んでいます。箇所によっては下敷きの規格より厳しい指定になっています。
TR-1001-1に準拠すると何が楽になりますか
機器をつないでからの手作業が減ります。IPアドレスはDHCPで配られ、レジストリはDNS-SDで見つかり、PTPの設定はIS-09から降りてきます。運用者が決めるのは信号の名前と組の関係で、技術的な設定は自動化される想定です。
TR-1001-1はIGMPについて何を求めていますか
メディアノードはIGMPv3に対応し、SDPに送信元アドレスの情報があればSSMの方式で参加することが求められています。IGMPv3への対応にはIGMPv2でも動けることと、使う版を自動で判断することが含まれます。
この用語を扱ったコラム
似ている形式との違い
| 名前 | 主に使う場面 | JT-NM TR-1001-1との違い |
|---|---|---|
| SMPTE ST 2110 | 映像・音声の伝送 | 何をどう運ぶかを決めた規格。TR-1001-1はそれを使った設備をどう組み上げるかの取り決め |
| NMOS IS-04 | 機器の検出と登録 | 個別の仕様。TR-1001-1はIS-04のどの版を最低条件とするかまで指定する |
| EBU TECH 3371 | 要求項目の全体像 | IP設備に必要な技術を一覧にした文書。TR-1001-1はそのうちシステム環境と機器の振る舞いに絞っている |
| JT-NM Tested | 相互接続の確認 | 実機が仕様どおりに動くかを試して結果を公開する枠組み。要求事項を書いた文書ではない |
関連する用語
最終更新
