JPEG XS.jxs
ジェイペグ エックスエス
映像を数ライン分の遅れだけで軽く圧縮する映像符号化方式で、2019年にISO/IEC 21122として規格化されました。劣化が見て分からない程度の圧縮で帯域を数分の1にでき、SMPTE ST 2110-22によるIP伝送やリモートプロダクションで使われています。
- 規格
- ISO/IEC 21122(第1版2019年、第2版2022年、第3版2024年)
- 策定
- JPEG(ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 1)
- 遅延
- 圧縮と伸長を合わせて1〜32ライン程度(設定による)
- 圧縮率の目安
- 2:1〜10:1で視覚的に劣化が分からない画質
- IP伝送
- SMPTE ST 2110-22、RTPペイロードの形式はRFC 9134
- MPEG-2 TSでの伝送
- VSF TR-07
- 拡張子
- .jxs
中継の映像を圧縮すると遅れる、遅れを嫌うと帯域が足りない。JPEG XSは、この板挟みをほどくために作られた規格です。圧縮率を欲張らない代わりに、遅れを1コマよりずっと短い数ライン分に抑えています。
JPEG XSが使われる場面
中心になるのは、放送局の設備のIP化とリモートプロダクションです。スタジアムや地方の会場のカメラ映像を、放送局の中の副調整室までネットワークで送り、スイッチングやテロップ入れを局の中で行う。この形では、映像が遅れると出演者の掛け合いやカメラの切り替えがずれるため、フレーム単位で遅れるH.264のような圧縮は使いにくくなります。JPEG XSなら、画質をほぼ保ったまま帯域を数分の1にでき、遅れもほとんど問題になりません。
放送局の中の設備でも使われています。SMPTE ST 2110は本来、映像を非圧縮で流す規格ですが、ST 2110-22で圧縮した映像を流す方法が定められ、その代表的な方式がJPEG XSです。12G-SDIが必要な4K 59.94pの信号も、JPEG XSで圧縮すれば10GbEのネットワークで複数本を扱えます。IPでつなぐカメラやコンバーター、ライブ制作用のスイッチャーに搭載が進んでいます。
放送以外では、会議室やイベント会場の映像をIPで配るAV over IPの機器にも使われています。
JPEG XSの仕組みと遅延
JPEG XSは、前後の画像を参照せず、1枚の画像の中でも数ラインずつ区切って圧縮します。1枚分のデータがそろうのを待たずに送り出せるので、遅延は圧縮と伸長を合わせても数ライン分、時間にすると1ミリ秒に届かない程度に収まります。ビットレートは一定なので、ネットワークの帯域を事前に確実に見積もれます。
計算も軽く、FPGAや汎用のCPUで実装しやすいように作られています。何度も圧縮と伸長を繰り返しても画質が崩れにくいことも、複数の機器を経由する放送の設備では重要な性質です。
JPEG XSを導入するときに確認すること
JPEG XSを使う機器を組み合わせるときは、同じ「JPEG XS対応」でも、中身がそろっているかを確かめる必要があります。確認したい点は次の通りです。
- 送る側と受ける側で、プロファイルとレベル、ビットレートの設定が合っているか
- 伝送の形式がST 2110-22か、MPEG-2 TSに載せるVSF TR-07か
- ST 2110で組むなら、機器の時刻をPTPでそろえているか
- 回線を二重化するなら、ST 2022-7に対応しているか
放送のIP化の全体像は、Media over IPとは?SMPTE ST 2110とNMOSで進む放送IP化を解説で詳しく扱っています。
よくある質問
JPEG XSとJPEG 2000の違いは何ですか
どちらもJPEGの委員会の規格ですが、JPEG 2000は圧縮率と画質を、JPEG XSは遅延の少なさと処理の軽さを優先しています。ライブの伝送ではJPEG XS、映画館や保管ではJPEG 2000が使われます。
JPEG XSの遅延はどのくらいですか
圧縮と伸長を合わせて数ライン分で、時間にすると1ミリ秒に届かない程度です。フレーム単位で遅れるH.264やH.265と比べると、ほぼ遅れがないと言える水準です。
JPEG XSはファイルとして保存できますか
できます。規格には、ファイルの形式やMP4などの入れ物に収める方法も含まれており、拡張子は .jxs です。ただし、対応する編集ソフトや再生ソフトはまだ限られています。
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