H.266 / VVC
Versatile Video Coding / エイチニーロクロク
HEVCの後継として2020年に規格化された動画圧縮方式です。同じ画質に必要なビットレートをHEVCからさらに減らすことを狙っており、ブラジルの新しい地上放送TV 3.0などで採用が決まっていますが、再生できる機器やソフトはまだ限られます。
- 規格
- ITU-T H.266 / ISO/IEC 23090-3(MPEG-I Part 3)
- 策定
- ITU-T VCEGとISO/IEC MPEGの合同チーム(JVET)。初版は2020年
- 主なプロファイル
- Main 10、Main 10 4:4:4
- 圧縮効率の目安
- MPEGの評価では、同じ主観画質でHEVCのおよそ半分のビットレート
- 放送での採用
- ブラジルのTV 3.0(DTV+)、DVBの映像・音声符号化の仕様
- 主なソフトウェア実装
- Fraunhofer HHIのVVenC(エンコーダ)とVVdeC(デコーダ)、FFmpeg 7.0以降のデコーダ
編集ソフトの書き出し形式を探しても、VVCはほとんど見つかりません。規格はできていても、エンコーダとデコーダを載せた製品がまだ少ない段階だからです。いまVVCに触れるのは、放送方式の選定や配信の圧縮効率の検証に関わる人が中心です。
VVCが使われる場面
採用がはっきり決まっているのは放送の分野です。ブラジルは次の地上デジタル放送方式TV 3.0(DTV+)で、VVCを必須の映像符号化方式に選びました。MPEG-5 LCEVCという拡張レイヤーとMPEG-H Audioを組み合わせる構成で、4Kの地上放送を想定しています。
欧州の放送規格を定めるDVBも、放送と通信で使う映像・音声符号化の仕様にVVCを加えています。受信機向けの仕様にもVVCが入り、放送機器のメーカーが対応製品を作る土台ができています。
日本でも、2025年3月にARIBで承認された地上放送高度化方式の標準規格で、VVCを放送で使うための技術条件が映像符号化方式として定められました。視聴者がレイヤーを選べるマルチレイヤー符号化も併せて規定されています。
規格の名前の Versatile は「用途が広い」という意味で、8Kのような高解像度だけでなく、360度映像や画面共有のようなパソコン画面の映像を効率よく圧縮する道具も最初から含んでいます。ただ、Webブラウザやスマートフォンの標準のプレーヤーで広く再生できる状況にはなっていないため、一般向けの配信で主役になるのはまだ先です。
VVCの仕組みとHEVCとの違い
基本の考え方は、ブロックに分けて予測し、差分を変換して符号化するというH.264以来の流れと同じです。違いは道具の数と細かさにあります。
- 符号化の単位(CTU)の最大サイズが、HEVCの64×64画素から128×128画素に広がった
- ブロックを4分割するだけでなく、2分割や3分割を組み合わせて映像の形に合わせて区切れる
- フレーム内予測の方向が、HEVCの35種類から67種類に増えた
- 途中のフレームで解像度を切り替えられる仕組みがあり、回線の状態に合わせた画質の切り替えに使える
こうした道具の積み重ねで、MPEGの評価ではHEVCと同じ主観画質をおよそ半分のビットレートで出せるとされています。その分エンコードの計算量は大きく、ソフトウェアで書き出すとHEVCより時間がかかります。
VVCの動画の再生方法と変換
いま手元でVVCを扱うなら、ソフトウェアの実装を使います。ドイツのFraunhofer HHIがエンコーダのVVenCとデコーダのVVdeCをオープンソースで公開しており、FFmpegは7.0で実験的なVVCデコーダを搭載し、7.1で安定版になりました。VVCのファイルを受け取って見られないときは、FFmpegでH.264やHEVCに変換すると一般的なプレーヤーで確認できます。
よくある質問
VVCとAV1はどちらが普及しますか
放送の分野ではVVCの採用が先に決まり、Web配信ではAV1の対応が先に広がっています。どちらか一方に決まるというより、放送と配信で使い分けが続くと見られています。
H.266の動画はパソコンで再生できますか
標準のメディアプレーヤーでは再生できない環境がほとんどです。FFmpeg 7.1以降など、VVCデコーダを含むソフトを使うか、H.264に変換してから再生します。
H.264・H.265・H.266は何が違いますか
どれもITU-TとISO/IECが共同で作った同じ系統の規格で、番号が大きいほど新しく、同じ画質に必要なビットレートが小さくなります。世代ごとの使い分けはH.264とH.265(HEVC)の違い|書き出しで迷わない判断軸で整理しています。
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似ている形式との違い
| 名前 | 主に使う場面 | H.266 / VVCとの違い |
|---|---|---|
| H.265 / HEVC | 4K8K衛星放送・iPhone | 一世代前の方式。対応機器が多く、いま4Kを扱うならこちらが現実的 |
| AV1 | Web配信 | 特許料のかからない別系統の方式。ブラウザやスマートフォンの対応はVVCより先に進んでいる |
| H.264 | 互換性優先の書き出し | 二世代前の方式。圧縮効率は低いが、再生できない機器はほぼない |
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