MPEG-H 3D Audio
ISO/IEC 23008-3 MPEG-H 3D Audio / エムペグエイチスリーディーオーディオ
チャンネル、オブジェクト、アンビソニックスの立体音響を1つの方式で符号化できるMPEGの音声規格です。視聴者が会話の大きさなどを選べる仕組みを持ち、韓国やブラジルの地上波放送、ソニーの360 Reality Audioに採用されています。
- 規格
- ISO/IEC 23008-3(MPEG-H Part 3)
- 国際標準になった時期
- 2015年
- 主な開発・推進
- Fraunhofer IIS など
- 扱える音
- チャンネルベース、オブジェクトベース、HOA(高次アンビソニックス)
- 放送向けのプロファイル
- Low Complexity Profile
- 放送での採用
- 韓国の地上波UHD放送(ATSC 3.0、2017年開始)、ブラジルのTV 3.0(唯一の必須音声方式として選定)
- 音楽での採用
- ソニーの360 Reality Audio
「MPEG-H」は、映像のHEVCなどを含む規格群の名前でもありますが、音声の分野でMPEG-Hと言えば、ほとんどの場合この3D Audioを指します。ステレオや5.1チャンネルの延長ではなく、音を部品ごとに送り、受信機の側で組み立てる考え方の方式です。
MPEG-H 3D Audioが使われる場面
最初に本格的に使われたのは放送です。韓国は2017年にATSC 3.0方式の地上波UHD放送を始め、その音声にMPEG-H 3D Audioを採用しました。ブラジルでは、次の地上デジタル放送の規格であるTV 3.0で、MPEG-H Audioが唯一の必須の音声方式に選ばれています。米国のATSC 3.0の規格にも、音声方式の選択肢の一つとして含まれています。
音楽では、ソニーの360 Reality Audioがこの方式を使っています。スタジオで楽器や声をオブジェクトとして空間に配置し、ヘッドホンやスピーカーで立体的に聞かせる音楽配信の形式です。
日本の新4K8K衛星放送では、8Kの22.2チャンネル音声にMPEG-4 AACが使われており、MPEG-H 3D Audioは採用されていません。国内の制作者がこの方式を扱うのは、海外の放送向けの制作や、360 Reality Audioの楽曲制作が中心です。
ただし、2025年3月にARIBで承認された地上放送高度化方式の標準規格では、オブジェクトベース音響に対応した音声符号化方式としてMPEG-H 3D Audioを放送で使うための技術条件が規定されました。
MPEG-H 3D Audioの仕組み
MPEG-H 3D Audioでは、1つの番組の音を、背景の音場(チャンネルやHOA)と、会話や実況のようなオブジェクトに分けて送ります。受信機は、その家のスピーカーの配置やヘッドホンに合わせて音を組み立て直します。スピーカーの数が合わない環境でも、送る側は1つの信号で済みます。
放送で注目されているのは、視聴者側で音を調整できる仕組みです。スポーツ中継なら、実況の声だけを大きくする、実況なしで会場の音だけを聞く、解説の言語を切り替える、といった選択を受信機のメニューから行えます。どこまで調整を許すかは、制作側がメタデータで範囲を決めておきます。解説放送のような副音声も、別の番組音声を丸ごと用意せずにオブジェクトとして重ねる形で送れます。
制作で間違えやすい点
MPEG-Hの制作では、音を混ぜ終えたミックスを作るだけでは足りません。どの音が会話か、どのオブジェクトを視聴者が動かしてよいか、どのプリセットを用意するかといった情報を、オーサリングの段階で書き込む必要があります。制作データの受け渡しには、ADM BWFのようなメタデータ付きのファイルが使われます。
音量の管理も考え方が変わります。視聴者が会話の大きさを変えても番組全体のラウドネスが大きく崩れないよう、方式の中に音量をそろえる仕組みがあり、制作側はプリセットごとの聞こえ方を確認しておく必要があります。
よくある質問
MPEG-HとMPEG-H 3D Audioは同じものですか
MPEG-Hは、伝送方式のMMTや映像のHEVCなどを含む規格群の総称です。その第3部が音声の3D Audioで、音声の文脈で「MPEG-H」と言うときは、多くの場合この3D Audioを指します。
MPEG-H 3D AudioとDolby Atmosの違いは何ですか
どちらもオブジェクトを使う立体音響ですが、MPEG-H 3D AudioはISO/IECの国際規格で、放送で視聴者が音を調整できる機能を重視しています。Dolby Atmosはドルビー独自の方式で、映画館と動画配信、音楽配信を中心に広がっています。
MPEG-H 3D Audioはヘッドホンで聞けますか
聞けます。受信機や再生アプリがヘッドホン向けに立体的な音へ変換する仕組みを持っており、360 Reality Audioもヘッドホンでの再生を主な想定にしています。
似ている形式との違い
| 名前 | 主に使う場面 | MPEG-H 3D Audioとの違い |
|---|---|---|
| Dolby Atmos | 映画・動画配信・音楽配信 | ドルビー独自の立体音響の方式。配信ではE-AC-3などに載せて届け、MPEG-Hのような視聴者側の調整機能は前面に出ていない |
| AAC | 日本の放送・Web動画 | 同じMPEGの音声規格だがチャンネルベースのみ。日本の8K放送の22.2chはMPEG-4 AACで送られている |
| E-AC-3 | 動画配信のサラウンド | ドルビーの配信用コーデック。立体音響はJOCでAtmosの情報を足す形で運ぶ |
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