音声形式収録編集MA・音声納品送出アーカイブ

リニアPCM

Linear Pulse Code Modulation / リニアピーシーエム

音の波形を一定の間隔で測り、その大きさを等間隔の数値でそのまま記録する、圧縮しないデジタル音声の表し方です。WAVやAIFFの中身、業務用カメラの音声、SDIやST 2110で送る音声まで、放送と映像制作の音の基本形になっています。

略称
LPCM
種別
圧縮しないデジタル音声の符号化方式(ファイル形式ではない)
決める値
サンプリング周波数、ビット深度、チャンネル数
映像制作の標準
48kHz、24bit
データ量の例
48kHz・24bit・ステレオで2.304Mbps(1時間で約1GB)
入れる主なファイル
WAV、BWF、AIFF、MOV、MXF
伝送での使われ方
SDIへの重畳(HDはSMPTE ST 299-1)、AES3、ST 2110-30、HDMI

カメラのメニューやBlu-rayの仕様表、ICレコーダーの商品名で「リニアPCM」という言葉を見かけても、それがファイル形式なのか音質の等級なのか分かりにくいものです。リニアPCMは、音を圧縮せずにそのまま数値で記録する方式の名前で、WAVやAIFFといったファイルの中身がこれにあたります。音を削らないので、何度コピーや読み書きをしても音質は変わりません。

リニアPCMが使われる場面

映像制作の音は、収録から仕上げまで、ほとんどがリニアPCMで扱われます。業務用カメラの音声トラック、撮影現場の録音機が書き出すBWF、編集からMAへの受け渡し、MAから戻ってくる完成音声、放送局への納品ファイルの音声。どの段階でも48kHz・24bitのリニアPCMが標準です。

放送局の設備の中を流れる音も同じです。SDIのケーブルでは、映像信号のすき間に音声をリニアPCMのまま重ねて送ります。HD-SDIでは最大16チャンネルです。音声専用の配線ではAES3、IP化した設備ではSMPTE ST 2110-30で、やはりリニアPCMを送ります。IPでの伝送についてはMedia over IPとはで解説しています。

一般向けの機器では、Blu-rayの音声やHDMIでつないだ機器の間でリニアPCMが使われています。ICレコーダーの「リニアPCMレコーダー」という呼び名は、MP3などの圧縮形式ではなく、非圧縮で録音できることを示したものです。

リニアPCMの仕組み

音の波形を、1秒間に決まった回数だけ測り、そのときの大きさを数値にして並べます。1秒間に測る回数がサンプリング周波数(48kHzなら48,000回)、1回の値を何bitで表すかがビット深度です。「リニア」は、音の大きさを等間隔の目盛りで数値にしていることを指します。電話の音声のように小さい音ほど細かい目盛りを使う方式は、PCMでもリニアではありません。

圧縮しないので、データ量は掛け算で決まります。48kHz・24bit・ステレオなら、48,000×24×2で毎秒2.304Mbit、1時間でおよそ1GBです。5.1チャンネルならその3倍になります。

リニアPCMの設定で迷いやすい点

カメラの音声記録で、リニアPCMとAACを選べる機種があります。あとで編集やMAを行うならリニアPCMを選びます。AACは記録の段階で音を削っているため、MAで音を整えるときの余裕が小さくなります。

ビット深度は16bitと24bitが一般的です。24bitは録音時の音量に余裕を持たせやすく、小さな声を後から持ち上げてもノイズが目立ちにくくなります。サンプリング周波数は、映像に使うなら48kHzにそろえます。音楽CDの44.1kHzと混ざると、編集ソフトの中で変換が入ります。

リニアPCMの音声が再生できない・読めないとき

リニアPCM自体はほぼすべてのソフトが扱えるので、読めない原因の多くは入れ物の側にあります。MXFの中で多チャンネルのモノラルとして入っている、MOVの中で珍しいバイト順になっている、といったケースです。MediaInfoでチャンネル数と形式を確かめ、FFmpegなどでWAVに書き出すと、たいていのソフトで開けるようになります。

よくある質問

リニアPCMとWAVの違いは何ですか

リニアPCMは音を数値にする方式の名前、WAVはその数値を収めるファイルの形式です。WAVの中身はほとんどの場合リニアPCMなので、実務ではほぼ同じ意味で使われることもあります。

リニアPCMとAACはどちらを選べばいいですか

編集やMAを予定しているならリニアPCMです。撮ったものをそのままSNSに上げる程度なら、容量の小さいAACでも困りません。

リニアPCMはハイレゾですか

リニアPCMは方式の名前で、ハイレゾかどうかはサンプリング周波数とビット深度で決まります。CDと同じ44.1kHz・16bitのリニアPCMはハイレゾではなく、96kHz・24bitのように、それを上回る設定の場合にハイレゾと呼ばれます。

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似ている形式との違い

名前主に使う場面リニアPCMとの違い
AAC配信・放送の送出聞こえにくい成分を削る非可逆圧縮。容量はリニアPCMの10分の1以下になるが、元の音には戻らない
FLACハイレゾ配信・音源の保存音を変えずに圧縮する可逆圧縮。元に戻すとリニアPCMと同じデータになる
Dolby E放送局内の多チャンネル音声の伝送最大8チャンネルの音声を、リニアPCM 2チャンネル分の枠に圧縮して通す方式

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