音声形式MA・音声納品配信

DTS.dts

Digital Theater Systems / ディーティーエス

映画館と家庭用ディスクで使われてきたサラウンド音声の方式の系統です。1993年の「ジュラシック・パーク」で劇場に導入され、DVDやブルーレイではドルビーと並ぶ選択肢として、可逆圧縮のDTS-HD Master AudioやオブジェクトベースのDTS:Xまで広がりました。

開発
Digital Theater Systems(1990年設立)。現在はXperi傘下
拡張子
.dts(単体の音声ファイルの場合)
DTS Digital Surround
5.1チャンネル、48kHz。コアのビットレートは最大1536kbps(ETSI TS 102 114)
DTS-HD High Resolution Audio
最大7.1チャンネル、96kHz / 24ビット。最大6144kbps
DTS-HD Master Audio
可逆圧縮。最大24576kbps(可変ビットレート)
構造
コアのストリームに拡張ストリームを足す形。古い機器はコアだけを再生できる
DTS:X
音の位置をメタデータで持つオブジェクトベースの方式

ブルーレイの音声を選ぶ画面に「DTS-HD Master Audio 5.1」と「ドルビーデジタル 5.1」が並んでいることがあります。どちらもサラウンドですが、圧縮のしかたもビットレートも違います。DTSはもともと映画館向けに作られた系統で、家庭用ではドルビーの対抗として広がりました。

DTSが使われる場面

始まりは映画館です。DTSは1990年に設立され、1993年の「ジュラシック・パーク」で採用されて広まりました。劇場方式の特徴は、音声をフィルムに焼き込まず別のディスクに置いた点にあります。フィルムには24ビットのタイムコードを光学的に記録し、それに同期させて音声を再生する構成でした。音声は圧縮した形でCD-ROMに収められていました。

家庭用では、DVDとブルーレイの音声形式として使われます。DVDでは後から追加された形式のため、初期のプレーヤーは対応していません。ブルーレイでは、コアの上に拡張を載せる形で高音質の選択肢が用意されています。

制作の現場では、パッケージソフトの音声の指定として出てきます。MAを終えた5.1chの素材を、オーサリングの段階でDTS-HD Master AudioにエンコードしてBDMVに載せる、という流れです。日本の放送ではAACが使われるため、放送の納品でDTSが指定されることはまずありません。

DTSの系統と仕組み

DTSの各方式は、コアのストリームに拡張ストリームを足していく構造で互換を保っています。古い機器は拡張を読み飛ばしてコアだけを再生できるため、1枚のディスクで新旧の機器に対応できます。主な方式は次の通りです。

  • DTS Digital Surround。5.1チャンネル、48kHzの基本形。コアのビットレートはETSI TS 102 114の表で最大1536kbpsまで定義されており、DVDではこれより低いレートで収録されたタイトルが多くを占めます
  • DTS 96/24。96kHz / 24ビットに対応した拡張
  • DTS-ES。後方のチャンネルを足して6.1チャンネルにする拡張で、マトリクス方式と離散方式があります
  • DTS-HD High Resolution Audio。最大7.1チャンネル、96kHz / 24ビット、最大6144kbps
  • DTS-HD Master Audio。可逆圧縮で、最大24576kbpsの可変ビットレート。展開すると元の波形に戻ります
  • DTS:X。音の位置をメタデータで持ち、再生環境のスピーカー配置に合わせて鳴らし分けるオブジェクトベースの方式

ドルビー側と並べると、DTS Digital SurroundがAC-3、DTS-HD Master AudioがDolby TrueHD、DTS:XがDolby Atmosに対応する位置関係になります。ブルーレイではドルビーデジタルとDTS Digital Surroundが必須で、可逆圧縮の方式は任意という扱いです。

DTSで間違えやすい点

  • DTS-HD Master Audioに対応していない機器では、拡張が読み飛ばされてコアの5.1chだけが再生されます。音は出るので、対応していないことに気付きにくいです
  • HDMIで音声を送る場合、機器やケーブルの世代によっては可逆圧縮のストリームをそのまま渡せず、機器側でデコードした形になります
  • ビットレートが高いぶん、DTS-HD Master Audioはディスクの容量を大きく使います。収録時間とのやりくりが要ります
  • 「DTS」と一語で書かれていても、指しているのがコアの5.1chなのかDTS-HD Master AudioなのかDTS:Xなのかで内容が変わります。仕様書では方式名まで書き切るほうが安全です
  • DTS:Xに対応した配信サービスは限られます。配信向けの立体音響はDolby Atmosの対応が先行しており、届け先によって選択肢が変わります

よくある質問

DTSとドルビーデジタルはどちらが音質が良いですか

同じ5.1chでも、DVDやブルーレイではDTSのほうが高いビットレートで収録されることが多く、その分は有利に働きます。ただし実際の印象は、ビットレートだけでなくミックスの作り方や再生環境で変わります。可逆圧縮のDTS-HD Master AudioとDolby TrueHDであれば、どちらも元の波形に戻るので、圧縮による差はありません。

DTSの音声が再生できないときはどうすればいいですか

再生機器またはソフトがDTSに対応していない場合は、プレーヤー側でLPCMに変換して出力する設定に切り替えると音が出ることがあります。パソコンでの再生では、DTSに対応したプレイヤーソフトを使うか、いったんWAVなどへ変換して確認します。

DTS:XとDolby Atmosは何が違いますか

どちらも音の位置をメタデータで持つオブジェクトベースの方式ですが、開発元も対応機器も別です。同じ作品で両方が用意されていることもあれば、片方だけのこともあります。再生側はAVアンプやサウンドバーがどちらに対応しているかで決まります。

似ている形式との違い

名前主に使う場面DTSとの違い
AC-3DVD・米国のデジタル放送ドルビーデジタルの名で知られる方式。5.1chを最大640kbpsに収めるため、同じディスクでもDTSより低いビットレートで入る
Dolby Atmos劇場・配信の立体音響ドルビーのオブジェクトベース方式。DTS:Xが同じ発想の競合にあたり、対応機器と配信先が分かれる
LPCMディスクの非圧縮音声圧縮しないので音は変わらないが容量が大きい。DTS-HD Master Audioは可逆圧縮なので、容量を抑えつつ元の波形に戻せる

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