音声形式納品送出アーカイブ

MPEG-1 Audio Layer II.mp2

MPEG-1 Audio Layer II / エムペグワンオーディオレイヤーツー

MPEG-1の音声規格の第2層として1993年に標準化された非可逆圧縮の方式です。MP3より圧縮効率は低いものの、時間方向の挙動と誤りへの強さから、欧州の放送やHDVカメラの音声として長く使われてきました。

拡張子
.mp2(単体の音声ファイルの場合)
規格
ISO/IEC 11172-3(MPEG-1 Audio)。ISO/IEC 13818-3で低いサンプリング周波数などを追加
開発の中心
フィリップス、CCETT、IRTによるMUSICAM
サンプリング周波数
32kHz、44.1kHz、48kHz(MPEG-2の拡張で16、22.05、24kHzも)
ビットレート
MPEG-1で32〜384kbps(MPEG-2の拡張でさらに低いレートも)
チャンネル
モノラル、ステレオ、ジョイントステレオ、デュアルチャンネル
圧縮の方式
32の帯域に分けるサブバンド符号化
主な採用先
DVBの放送、DABラジオ、Video CD、HDVカメラ

納品仕様書に「音声はMPEG-1 Audio Layer II、384kbps」と書かれていて、MP3の親戚だろうかと調べる人が多い形式です。実際にMP3と同じMPEG-1 Audioの規格の中にあり、層の番号が1つ違うだけです。ただし使われてきた場所は音楽ファイルではなく、放送と業務用カメラでした。

MPEG-1 Audio Layer IIが使われる場面

欧州のDVB系の放送では、デジタル放送の初期からこの方式が音声の基本として採用されてきました。AACに置き換わった後も、既存の受信機が受けられる方式として残っている運用があります。DABのデジタルラジオでも使われており、もともとこの方式はデジタル音声放送のためのMUSICAMとして開発されたものです。

映像制作で出会うのは、HDVのカメラで撮った素材です。HDVはJVC、ソニー、キヤノン、シャープが2003年に立ち上げた規格で、音声はMPEG-1 Audio Layer IIのステレオ、48kHz、16ビット、合計384kbpsと決められています。テープ時代のHDV素材をアーカイブから出してくると、この形式の音声が付いています。

Video CDやSuper Video CDの音声もこの方式です。過去の資料映像をディスクから取り込む作業では、映像がMPEG-1やMPEG-2、音声がLayer IIという組み合わせに出会います。放送局の間で素材をTSで受け渡す運用でも、音声にこの方式が指定されていることがあります。

MPEG-1 Audio Layer IIの仕組みとMP3との違い

Layer IIは、音を32の帯域に分けて、それぞれの帯域で人の耳に聞こえにくい成分を削るサブバンド符号化です。MP3は同じ仕組みの上にさらに変換を重ね、576の周波数成分に細かく分けます。この違いが性格の差になっています。

  • Layer IIは周波数の分解能が粗いぶん、同じビットレートでの圧縮効率はMP3に劣ります
  • 代わりに符号化の遅延が小さく、計算量も軽くなります
  • 時間方向の挙動が素直で、打楽器のような立ち上がりの速い音が崩れにくいとされています
  • フレームが独立しているため、伝送路で誤りが出たときの影響がその区間にとどまります

放送で長く使われてきたのは、後半の3点が効く場面だったからです。生放送の音声チェーンでは遅延が積み上がりますし、電波の伝送では誤りが避けられません。192kbps程度から上のビットレートを確保できる放送の帯域では、圧縮効率の差はそれほど問題になりませんでした。

日本の地上デジタル放送は、この方式ではなくAACを採用しています。同じ音質をより低いビットレートで出せるため、限られた帯域で映像に回す分を増やせるという判断です。欧州と日本で放送の音声方式が分かれているのは、規格化の時期と系統が違うためです。

MPEG-1 Audio Layer IIで間違えやすい点

  • 拡張子が .mp2 でなくても、この形式のことがあります。TSやMPEG-PSの中に多重化されていると、拡張子からは分かりません。中身はMediaInfoなどで確認します
  • 再生できないソフトがあります。一般的な編集ソフトは読めますが、Web向けのプレイヤーやスマートフォンの標準アプリは対応していないことがあります
  • 「MP2」という表記はMPEG-2の略と紛らわしいため、仕様書ではMPEG-1 Audio Layer IIと書き下すほうが誤解を避けられます
  • AACへ変換すると音質は取り戻せません。元が384kbpsのLayer IIでも、変換で失われた成分は戻らないので、アーカイブは元の形のまま残すのが安全です

よくある質問

MP2とMP3はどちらが音質が良いですか

同じビットレートなら、多くの場合MP3のほうが有利です。ただし192kbps以上では差が縮まり、放送で使われてきた384kbpsのような高いビットレートでは実用上の差は小さくなります。遅延と誤りへの強さではLayer IIが有利です。

MPEG-1 Audio Layer IIのファイルをWAVに変換できますか

できます。非可逆圧縮なので変換しても削られた成分は戻りませんが、編集やMAの工程へ渡すために非圧縮に開く作業は一般的です。FFmpegや編集ソフトの読み込みで扱えます。

HDVの素材の音声はなぜMP2なのですか

HDVの規格でMPEG-1 Audio Layer IIのステレオ、48kHz、16ビット、384kbpsと定められているためです。テープの限られた記録容量の中で、映像に帯域を回しつつ実用十分な音質を確保する選択でした。

似ている形式との違い

名前主に使う場面MPEG-1 Audio Layer IIとの違い
MP3音楽ファイル同じMPEG-1の第3層。変換を使って周波数分解能を上げているため低いビットレートで有利だが、遅延と計算量は増える
AAC放送・配信の音声後の世代の方式で、同じ音質をより低いビットレートで出せる。日本の地上デジタル放送はこちらを採用している
Dolby E局間の素材伝送フレーム同期を前提にした業務用の中継ぎ形式。視聴者へ届く前に必ずデコードされる

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