Dolby Atmos.atmos.wav
ドルビーアトモス
音をスピーカーの数ではなく「空間のどこに置くか」で記録する、ドルビーの立体音響の方式です。高さ方向を含めた音の位置をメタデータで持ち、映画館から家庭のテレビ、ヘッドホンまで、再生環境に合わせて鳴らし分けます。
- 開発
- ドルビーラボラトリーズ(2012年に劇場向けで登場)
- 方式
- ベッド(チャンネル)とオブジェクトを組み合わせるオブジェクトベース音響
- 同時に扱える要素
- 最大128。劇場向けは7.1.2のベッドと118のオブジェクト
- 劇場のスピーカー出力
- 最大64系統
- 制作用のマスター
- Dolby Atmos Master File(.atmos 一式)、ADM BWF
- 家庭への届け方
- Dolby TrueHD(ブルーレイ)、Dolby Digital Plus(配信)、AC-4
- 主な制作ソフト
- Dolby Atmos Renderer、Pro Tools、Logic Pro、Nuendo、DaVinci Resolve
配信サービスの作品一覧や音楽アプリで「Dolby Atmos」のマークを見ても、何がステレオや5.1チャンネルと違うのかは分かりにくいものです。違いは、音を「どのスピーカーから出すか」ではなく「空間のどこに置くか」で記録している点にあります。
Dolby Atmosが使われる場面
始まりは映画館で、2012年に劇場向けのシステムとして登場しました。いまでは映画のブルーレイ、Netflix、Amazon Prime Video、Disney+、Apple TV+などの動画配信、Apple Musicなどの音楽配信にまで広がっています。
制作側で出会うのは、MAの工程です。Pro Tools、Nuendo、Logic Pro、DaVinci ResolveのFairlightなどでミックスし、Dolby Atmos Rendererで各スピーカーやヘッドホン向けの鳴り方を確認します。天井にスピーカーを置いた7.1.4のようなモニター環境でミックスするのが一般的ですが、ヘッドホンのバイノーラル出力で確認しながら作る現場もあります。
仕上がった音は、Dolby Atmos Master File(.atmos、.atmos.audio、.atmos.metadata の3点一式)か、1本のWAVにまとめたADM BWFで納品するのが基本です。配信事業者や音楽ディストリビューターの仕様書で、この2つのどちらかを指定されることが多くあります。
Dolby Atmosの仕組み
Atmosの音は2種類の要素でできています。1つは「ベッド」で、7.1.2のように位置が決まったチャンネルの音です。環境音や音楽の土台はここに入ります。もう1つが「オブジェクト」で、ヘリコプターの音や人の声のように動かしたい音を、座標のメタデータ付きで持ちます。
再生側のレンダラーは、その場にあるスピーカーの数と配置を見て、オブジェクトの座標からどのスピーカーをどれだけ鳴らすかを計算します。同じミックスが、劇場の数十本のスピーカーでも、家庭のサウンドバーでも、ヘッドホンでも鳴らせるのはこのためです。家庭向けに配信するときは、要素を空間的にまとめて数を減らしたうえで、E-AC-3やDolby TrueHDに載せて届けます。
Dolby Atmosの納品と運用で間違えやすい点
ADM BWFや .atmos 一式は、サンプリング周波数を48kHzで作るのが一般的です。音楽制作でよく使う44.1kHzのセッションのまま書き出すと、差し戻しの原因になります。
ステレオや5.1チャンネルの版は、Atmosのミックスからレンダラーで自動的に作る方法と、別に作り込む方法があります。どちらを求めるかは納品先によって違うので、仕様書で確認します。ラウドネスの測定も、Atmosの元データではなく、レンダリングした結果に対して行います。Dolbyのレンダラーのガイドでは、5.1チャンネルにレンダリングした音で測ることを勧めています。
よくある質問
Dolby Atmosはヘッドホンで聞いても意味がありますか
あります。ヘッドホンでは、Atmosの位置情報をもとに、頭の周りや上から音が聞こえるように加工したバイノーラル音声で再生されます。スピーカーを並べた環境と同じ体験にはなりませんが、ステレオとは違う広がりが出ます。
Dolby Atmosと5.1chサラウンドの違いは何ですか
5.1chは6本のスピーカーの位置を前提に音を配分済みの形で記録します。Atmosは音の位置を記録しておき、再生する環境に合わせてその場で配分するため、高さ方向の表現やスピーカー数の違いに対応できます。
Dolby Atmosのミックスに必要なソフトは何ですか
ミックスにはAtmosに対応したDAWと、Dolby Atmos Rendererのようなレンダラーが必要です。Pro Tools、Nuendo、Logic Pro、DaVinci Resolveなどが対応しており、ソフトによってはレンダラーの機能を内蔵しています。
似ている形式との違い
| 名前 | 主に使う場面 | Dolby Atmosとの違い |
|---|---|---|
| MPEG-H 3D Audio | 次世代放送・音楽配信 | MPEGが規格化した立体音響。視聴者が会話の大きさなどを調整できる仕組みを放送向けに持つ |
| E-AC-3 | 動画配信の音声 | 音声の圧縮方式の名前。配信のAtmosはE-AC-3を器にしてAtmosの情報を運ぶ |
| 5.1chサラウンド | 放送・ディスク | スピーカーの数と位置を固定したチャンネルベース。高さ方向の音は持たない |
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