信号・規格編集納品配信

Dolby Vision

ドルビービジョン

Dolbyが提供するHDRフォーマットです。PQを土台に、ショットごとの動的メタデータを付けて、表示するテレビの性能に合わせた明るさの変換を指示します。配信大手のHDR作品の納品で広く求められています。

提供
Dolby Laboratories
明るさのカーブ
PQ(プロファイル8.4はHLG)
メタデータ
動的(ショット単位)。方式はSMPTE ST 2094-10として規格化
ビット深度
最大12bit
主なプロファイル
5(配信向けの単層)、7(UHD Blu-ray向けの2層)、8.1(HDR10互換)、8.4(HLG互換)
主な制作ソフト
DaVinci Resolve Studio、Baselight
ライセンス
対応機器や制作ツールへの搭載にDolbyとの契約が必要

Dolby Visionの映像には、絵そのものとは別に、ショットごとに「この性能のテレビならこう変換する」という指示が入っています。作品全体で1組のメタデータしか持たないHDR10との違いは、この1点に集約されます。

Dolby Visionが使われる場面

配信では、Netflix、Disney+、Apple TV+などがDolby Visionの作品を配信しています。納品では、映像をIMFのパッケージにまとめ、Dolby VisionのメタデータをXMLファイルとして添える形がよく使われます。

映画館では、Dolby Cinemaの上映がDolby Visionの映像で行われます。UHD Blu-rayでは、HDR10の層にDolby Visionの情報を重ねた2層構成のディスクがあります。

撮影側では、iPhone 12以降で撮ったHDR動画にDolby Visionのメタデータが付きます。この場合の映像はHLGで、プロファイル8.4と呼ばれる形です。

Dolby Visionの仕組み

制作の流れは、まずHDRのマスターを作ることから始まります。ピーク輝度1,000cd/m²、色域P3のマスターモニターでPQの映像をグレーディングし、仕上がったらショットごとに映像を解析します。解析結果として、各ショットの最小、平均、最大の明るさがレベル1(L1)と呼ばれるメタデータに記録されます。

次に、明るさの低いテレビでどう見せるかを調整するトリムの作業に移ります。100cd/m²のSDRを目標にしたトリムを作り、必要に応じて600cd/m²などの中間の目標も加えます。テレビは自分のピーク輝度に近い目標のトリムを参考に、ショットごとに明るさを変換します。

プロファイルは、映像の層の組み方と互換性で分かれています。

  • プロファイル5:Dolby Vision専用の単層。配信で使われ、非対応の機器では正しく表示できない
  • プロファイル7:HDR10の基本層に拡張層を重ねる2層。UHD Blu-rayで使われる
  • プロファイル8.1:HDR10として再生できる単層。非対応の機器ではHDR10として表示される
  • プロファイル8.4:HLGとして再生できる単層。iPhoneのHDR動画がこの形

Dolby Visionの納品で間違えやすい点

納品の段階では、次の点で差し戻しが起きやすくなります。

  • 映像とメタデータXMLの尺やフレームレートがずれる。再編集したら解析とトリムをやり直し、XMLを出し直す
  • ショットの区切りがずれる。解析はショット単位なので、カットの位置とメタデータの区切りが合っていないと、途中で明るさが急に変わる
  • CM(Content Mapping)のバージョンが納品先の指定と違う。現在はCM v4.0での解析とトリムが推奨されているが、互換性のためにv2.9のメタデータを求める仕様書もある
  • SDRトリムを100cd/m²のモニターで見ていない。HDRだけで確認すると、SDR表示で暗部がつぶれたまま納品してしまう

よくある質問

Dolby VisionとHDR10の違いは何ですか

HDR10は作品全体で1組の静的メタデータ、Dolby Visionはショットごとの動的メタデータを持ちます。Dolby Visionは12bitまで扱え、テレビの性能に合わせた変換を細かく指示できます。詳しくはHDR10の項目で比べています。

Dolby Vision非対応のテレビで再生するとどうなりますか

プロファイルによって変わります。8.1ならHDR10、8.4ならHLGとして表示されます。プロファイル5はDolby Vision独自の色の形式で記録されていてHDR10やSDRとの互換性が無いため、非対応の機器では正しい色で表示できません。

iPhoneで撮ったDolby Vision動画は編集できますか

Final Cut Pro、Premiere Pro、DaVinci ResolveでHLGの映像として読み込めます。書き出したファイルにDolby Visionのメタデータが残るかどうかは、ソフトと書き出し設定によって変わります。

似ている形式との違い

名前主に使う場面Dolby Visionとの違い
HDR10UHD Blu-ray・配信作品全体で1組の静的メタデータ。ライセンス料が要らない
HDR10+配信・一部のテレビSamsungが提唱した動的メタデータの方式。考え方はDolby Visionに近い
HLG放送・生中継メタデータを使わないHDR方式。放送で使われる

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