統計多重
statistical multiplexing / トウケイタジュウ
1本のTSに複数の番組を載せるとき、決まった総ビットレートを番組ごとの絵の複雑さに応じて配分する方式です。動きの少ない番組の余りを動きの激しい番組へ回すので、同じ帯域でより多くの番組を載せられます。
- 英語表記
- statistical multiplexing(statmux)
- 何をするか
- 1本のMPTSの総ビットレートを、番組ごとの符号化の難しさに応じて配る
- 前提
- 各番組のエンコーダーをVBRで動かし、多重化装置と情報をやりとりさせる
- 総レート
- 伝送路の容量で決まる固定値。放送波なら1チャンネルぶんの容量
- 得られるもの
- 同じ容量でより多くの番組、または同じ番組数でより高い画質
- 弱点
- ある番組の絵が難しくなると、他の番組に回る割り当てが減る
- 対になる運用
- 番組ごとに帯域を固定して多重する方式(固定多重)
同じチャンネルで、ニュースの時間帯は絵がきれいなのに、スポーツ中継とサブチャンネルの番組が重なった時間帯だけブロックノイズが見える。この差を生んでいるのが統計多重です。1本の伝送路の容量は決まっていて、その中をいくつかの番組が分け合っているためです。
統計多重が使われる場面
いちばん規模が大きいのは、デジタル放送の送出です。地上デジタル放送の1つの物理チャンネルで運べる容量は決まっているので、ハイビジョンの本編、ワンセグ、データ放送が同じ容量を分け合います。標準画質の番組を2〜3本並べるマルチ編成の時間帯は、各番組へ回る帯域がその分小さくなります。
ケーブルテレビやIPTVの事業者も、1本の伝送路に多数のチャンネルを載せるために統計多重を使います。放送事業者から受けたチャンネルを再圧縮してまとめるヘッドエンドの設備では、どのチャンネルへどれだけ配るかの設計がそのまま画質に直結します。
衛星回線や専用線で複数系統の素材を送る中継でも、同じ考え方が使われます。1つのトランスポンダや回線の容量を複数の映像で分け合い、余った帯域を必要な系統へ回します。
統計多重の仕組み
統計多重では、番組ごとのエンコーダーを固定レートで動かしません。各エンコーダーは、いまの絵をどれくらいのデータ量で圧縮したいかを多重化装置(統計多重制御)へ伝え、制御側が全体の容量からそれぞれへの割り当てを決めて返します。エンコーダーはもらった割り当てに合わせて量子化の強さを変え、結果として各番組のビットレートが刻々と上下します。
割り当てが効くのは、番組の難しさがばらつくからです。動きの少ないスタジオのトーク番組は少ないデータ量でも十分きれいに圧縮でき、その余りが、カメラが振られるスポーツや細かい観客席が映る場面に回ります。全番組の合計は常に伝送路の容量に収まるように保たれ、余った分は最終的にヌルパケットで埋められます。
割り当ての細かさは、GOPの区切りと関係します。フレーム内だけで圧縮するIフレームはデータ量が大きいので、複数の番組のIフレームが同じ瞬間に重なると一時的に取り合いになります。これを避けるため、番組ごとにIフレームの位置をずらす制御も使われます。
統計多重で起きやすい画質のトラブル
いちばん分かりやすい症状が、他の番組につられた画質の落ち込みです。自分のチャンネルは何も変えていないのに、同じ多重の中の別の番組で花火や紙吹雪のような細かい動きが続くと、割り当てが減ってブロックノイズが出ます。設計の段階で、各番組の最低保証のビットレートを決めておくのが一般的な対処です。
素材側の作りで割り当てを浪費することもあります。フィルムグレインやノイズの多い素材、細かい模様の背景、絶えず動くテロップは、見た目の情報量に対して圧縮しにくく、データ量を大きく食います。
伝送路をIPに置き換えるときは、統計多重の前提そのものを見直します。IP回線では総容量の考え方が変わるため、番組ごとにCBRで送って受け側でまとめる構成にすることもあります。1本のMPTSに固定容量で押し込む必要が無いなら、統計多重を使わない設計も選べます。
よくある質問
統計多重にすると画質は良くなりますか
同じ総ビットレートで比べると、番組ごとに帯域を固定する方式より平均的な画質は上がります。ただし全番組が同時に難しい絵になった瞬間は、どの番組も割り当てが足りず、固定方式より悪くなることがあります。
統計多重とVBRの違いは何ですか
VBRは1本のストリームの中で場面ごとにデータ量を配分する仕組みです。統計多重は複数の番組の間でデータ量を配分する仕組みで、各番組のエンコーダーはVBRで動きます。層が1つ上と考えると分かりやすいです。
マルチ編成にすると画質が落ちるのはなぜですか
1つの物理チャンネルで運べる容量は決まっているため、番組を増やすとその容量を分け合うことになり、1番組あたりのビットレートが下がります。統計多重で配分を最適化しても、総量そのものは増えません。
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