テロップよけ
テロップヨケ
映像にすでに焼き込まれているテロップの上に字幕が重ならないよう、字幕の表示位置を動かして逃がす作業のことです。放送字幕は画面の下が既定の位置なので、下にテロップがある区間だけ上へ寄せます。
- 対象
- 映像に焼き込まない字幕(字幕放送、配信の切り替え式字幕)
- 動かすもの
- 字幕の表示位置。既定は画面下
- ARIB字幕での位置指定
- 文字単位のほか、ドット単位でも指定できる
- HD字幕の表示領域の目安
- 横21文字×8行(ARIB STD-B36のHD字幕)
- 位置を持てる字幕形式
- ARIB STD-B36、NAB形式、TTML、WebVTT、ASS
- 位置を持てない字幕形式
- SRT(表示位置の情報を持たない)
- ルールの決まり方
- 局や番組、案件ごとの字幕制作ルールで指定される
字幕ボタンを押したら、画面の下のテロップと字幕が重なって、どちらも読めなくなった。バラエティや情報番組の字幕制作で最初に突き当たるのがこの問題で、対処が「テロップよけ」です。字幕は映像とは別の面に描かれ、受信機が映像の上に重ねて出すので、重なるかどうかは字幕を置く座標だけで決まります。
テロップよけが必要になる場面
いちばん多いのは、画面の下半分にテロップが常に出ている番組です。バラエティのコメントフォロー、情報番組の名前と肩書きのスーパー、料理や旅番組の店名と価格の表示は、どれも字幕の既定の位置とぶつかります。選挙特番や災害時のL字画面のように、画面の下と右が情報表示で埋まっている番組も同じです。
字幕制作の工程では、書き起こしとハコ割りが済んだあと、映像を頭から見ながら1枚ずつ位置を決めていきます。下にテロップがある区間は上寄せ、上に別の表示がある区間は下寄せ、というように区間ごとに切り替えます。上下を行き来しすぎると視線が疲れるので、同じ場面の中では位置をそろえる、という決め方をする現場もあります。
近年は、テロップの位置を画像解析で自動的に検出し、その領域を避けて字幕を置く仕組みも使われています。自動で置いた位置を人が通し見で直す、という流れです。
テロップよけのルールが指定される形
テロップよけの基準は、法令や規格ではなく、局ごと番組ごとの字幕制作ルールとして渡されます。仕様書や申し送りに書かれるのは、次のような内容です。
- 下にテロップがある区間の字幕を、上何行目に出すか
- 名前スーパーが出ている間は必ず上に逃がすのか、字数によっては下のままでよいのか
- 画面右のサイドスーパーやL字表示があるときの左右の寄せ方
- 話者の色分けを、位置を変えたあとも維持するか
ARIB STD-B36で納める放送字幕は、表示位置を文字単位のほかドット単位でも指定できます。HD字幕は横21文字×8行が画面に収まる組みなので、「上から2行目」「下から3行目」のように行の番号で指示が来ることが多くなります。
テロップよけを失敗するとどうなるか
重なりに気づかないまま納品すると、局の試写で差し戻されます。文字の上に文字が乗った画面は、テロップも字幕も読めず、放送に出すと視聴者から見えないと指摘されます。
やっかいなのは、確認した画面と放送に出る画面が違う場合です。ワンセグや携帯端末向けの字幕は1画面の文字数と行数が組み直されるため、HDでは避けられていた字幕が別の位置に回り込むことがあります。SD向けにサイドカットされる素材では、左右に寄せた字幕が画面の外に出てしまうこともあります。位置を動かした字幕は、出し分けのすべての形で一度見ておくのが安全です。
もう1つよくあるのが、途中でテロップの尺が変わったケースです。編集の直しでテロップが1秒延びただけで、よけの区間と合わなくなり、境目の1枚だけが重なります。
テロップよけができる字幕形式とできない字幕形式
位置を動かせるのは、字幕データが表示位置を持てる形式のときだけです。ARIB STD-B36とNAB形式、配信で使うTTMLやWebVTT、動画用のASSは位置を指定できます。
一方、SRTには表示位置の情報がありません。SRTで受け取った字幕をそのまま放送字幕に変換すると、よけの指示は失われ、全部が既定の位置に出ます。SRTで作業を進める段取りなら、よけが必要な区間を別の一覧で申し送るか、位置を持てる形式に切り替える必要があります。
よくある質問
テロップよけと焼き付け字幕の違いは何ですか
焼き付け字幕は映像に合成してしまう字幕なので、編集の段階でテロップと字幕の位置をまとめて決めます。テロップよけは、映像とは別のデータで送る字幕の座標を後から決める作業です。
テロップよけは自動でできますか
テロップの領域を画像解析で検出し、その位置を避けて字幕を置く処理は実用されています。ただし、どこまで逃がすか、同じ場面で位置をそろえるかといった判断はルール側の問題なので、人の確認は残ります。
SRTで納品してもテロップよけはしてもらえますか
SRTは表示位置を持てないため、ファイル自体には指示を残せません。テロップよけが要る案件では、位置を持てる形式での受け渡しを前提にするのが一般的です。字幕の形式ごとの違いはCM字幕とテロップの違いでも触れています。
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