ARIB STD-B36.1HD.1SD
デジタルテレビジョン放送におけるデジタル字幕ファイル交換フォーマット / アライブエスティーディービーサンジュウロク
日本のデジタルテレビ放送で、字幕制作会社と放送局のあいだで字幕データをファイルとして受け渡すための形式を定めたARIBの標準規格です。文字、表示時刻、位置、色、外字をバイナリで持ちます。
- 正式名称
- デジタルテレビジョン放送におけるデジタル字幕ファイル交換フォーマット
- 策定団体
- 電波産業会(ARIB)
- 版
- 1.0版(2002年7月)策定。2.5版(2022年4月)が最新
- 対象の放送
- 地上デジタル、BSデジタル、広帯域CSデジタルのテレビ放送
- データ形式
- バイナリ。字幕の文字符号化はARIB STD-B24の方式による
- 拡張子
- .1HD(HD字幕)。SD字幕は .1SD
- 前身
- 民放連技術規準のNAB形式(フロッピーディスクによる文字放送の番組交換)
- 4K・8K放送向け
- ARIB STD-B69(第2世代の字幕ファイル交換フォーマット)
納品仕様書に「ARIB STD-B36準拠」とあり、手元にはSRTしかない。この状況で必要なのは拡張子の付け替えではなく、字幕の作り直しに近い作業です。B36のファイルは文字と時刻に加えて、画面上の位置、色、外字、HD用とSD用・携帯用の出し分けまで持つ放送用のデータだからです。
ARIB STD-B36が使われる場面
いちばん多いのは、番組の字幕放送のために、字幕制作会社が放送局へ字幕を納める場面です。制作会社は放送字幕専用の制作ソフトで字幕を組み、B36形式で書き出して、番組の映像とは別のファイルとして納品します。
発注側の仕様書には、形式を「.1HD形式、ARIB STD-B36準拠」と書き、ファイル名を局の番組コードに、ファイル内の管理情報に制作局名や番組名を登録するよう指定する例があります。現場で「.1HDファイル」と呼ばれているのは、このB36のファイルです。番組冒頭の音出しを10:00:00:00とするタイムコードに合わせて字幕の出る時刻を決める、といった運用上の取り決めも仕様書側で添えられます。
局の中では、受け取ったB36ファイルを字幕送出の設備に読み込ませ、本編の送出と同期させて放送波に乗せます。ファイルベースで番組を搬入する局では、字幕をMXFの補助データ領域に重ねてから受け渡すこともあります。そのときの字幕はB36のファイルではなく、B37の字幕パケットとして素材の中に入ります。
ARIB STD-B36の仕組み
ARIBの規格概要によると、B36はそれまで使われていたNABの技術規準を土台に、HDTV対応、多言語対応、フロッピーディスク以外の媒体への記録、ロールアップ表示、携帯端末向け字幕(2004年の2.0版で追加)を足した形式です。
ファイルの中には、番組単位の管理情報と、1枚ずつの字幕(ページ)のデータが入ります。ページごとの本文は、デジタル放送の字幕符号化を定めたARIB STD-B24の方式で書かれ、文字の大きさや色、表示位置、点滅、ルビ用の小さい文字もこの符号の中の制御コードで表します。辞書にない人名の漢字などは、外字(DRCS)として図形データごとファイルに入れます。
HD字幕の場合、NABと同じ文字サイズで横21文字×8行が画面に収まり、位置は文字単位のほかドット単位でも指定できます。
ARIB STD-B36の運用で間違えやすい点
1つめは、NAB形式で作った字幕をB36に変換して出す運用です。変換自体はできますが、NABは4:3画面の範囲で配置を決める形式なので、16:9画面の左右を使わない組み方のまま残ります。仕様書で「入出力ともARIB字幕の仕様で行い、NAB字幕を変換して出力しないこと」と明記する発注元もあります。
2つめは、携帯端末向け字幕への自動変換です。HD字幕から携帯字幕を作る段階で1画面が16文字×3行または12文字×4行に組み直され、あふれた文字やルビは表示されません。HDでは問題ない字幕が、携帯版では文の途中で切れていることがあります。
3つめは、フレームレートと開始タイムコードの前提のずれです。編集側の書き出し設定と納品先の前提が1つ違うだけで、全ページが数秒単位で遅れたり早まったりします。
ARIB STD-B36と似ている規格との違い
名前の近い規格は役割で分けると覚えやすくなります。B24は字幕の文字をどう符号化するかを決める規格、B36はその字幕をファイルにして制作会社と局でやりとりする規格、ARIB STD-B37はSDI信号の補助データ領域に字幕を載せて運ぶ規格です。4K・8K放送の字幕は方式そのものが別で、ファイル交換はARIB STD-B69が受け持ちます。
よくある質問
ARIB STD-B36の規格書はどこで入手できますか
ARIBの会員企業は会員サイトから無料でダウンロードできます。会員以外はARIB Web Storeでダウンロード版を購入します。
ARIB STD-B36のファイルはどうやって開けますか
SemdecやNeONのような放送字幕の制作ソフト、または放送字幕用のビューアで開きます。メモ帳などのテキストエディタでは中身を読めません。ソフトの選び方は放送字幕制作の定番ソフトSemdec・NeONで紹介しています。
SRTからARIB STD-B36に変換できますか
変換ツールを通せばファイルとしては作れます。ただしSRTには位置や色、HD/SD/携帯の出し分けの情報がないため、変換後に放送字幕の基準で改行や配置を見直す作業が必ず残ります。
この用語を扱ったコラム
似ている形式との違い
| 名前 | 主に使う場面 | ARIB STD-B36との違い |
|---|---|---|
| NAB形式 | アナログ放送時代からの字幕交換 | 4:3画面のグリッドで位置を決める旧形式。B36はHD、多言語、ロールアップ、携帯字幕まで広げた後継 |
| ARIB STD-B37 | SDI信号やMXFへの字幕の重畳 | B36がファイルで字幕を渡す規格なのに対し、B37は映像信号の補助データ領域に字幕を載せて運ぶ規格 |
| SRT | Web動画・配信 | 時刻と文字だけのテキスト。位置、色、外字、HD/SD/携帯の出し分けを持てないため局の字幕納品には使えない |
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