ARIB STD-B32
デジタル放送における映像符号化、音声符号化及び多重化方式 / アライブエスティーディービーサンジュウニ
日本のデジタル放送で使う映像と音声の符号化方式、それらを1本の信号にまとめる多重化方式を定めたARIBの標準規格です。MPEG-2やHEVCなど国際規格のうち、放送で使える形式とパラメータの範囲をここで絞り込んでいます。
- 正式名称
- デジタル放送における映像符号化、音声符号化及び多重化方式
- 策定団体
- 電波産業会(ARIB)
- 版
- 1.0版(2001年5月)策定。4.1版(2026年4月)が最新
- 構成
- 第1部 映像信号と符号化方式、第2部 音声信号と符号化方式、第3部 伝送信号の多重化方式(3分冊)
- 映像符号化
- MPEG-2 Video、MPEG-4 AVC、HEVC、VVC
- 音声符号化
- MPEG-2 AAC、MPEG-2 BC、MPEG-4 AAC、MPEG-4 ALS、MPEG-H 3D audio、AC-4
- 多重化
- TSパケットによる伝送、TSパケットによるIPパケット伝送、TLVパケットによる伝送
- 前身
- 1998年策定のSTD-B20に書かれていた符号化と多重化の方式を、放送メディア共通の規格として独立させたもの
放送用エンコーダーや受信機のデコーダーの仕様書に「ARIB STD-B32準拠」とあれば、MPEG-2やHEVCに対応しているだけでは足りず、日本の放送で許された解像度、フレームレート、プロファイル、ビットストリームの制約の中で動くことが求められます。国際規格の広い選択肢を、放送向けに絞り込んだ規格です。
ARIB STD-B32が使われる場面
送出マスターのエンコーダーと多重化装置、演奏所から送信所への伝送装置、テレビやレコーダーのデコーダーを作るときの基準になります。受信機は、B32の範囲で送られてくる信号なら必ず再生できるように作り、送出側はその範囲を超えない信号を出す、という約束です。
2Kの地上デジタル放送とBSデジタル放送では、映像はMPEG-2 Video、音声はMPEG-2 AACが中心です。1080/60/Iの映像をMPEG-2で送る場合、横の画素数は1920と1440の両方が認められていて、地上デジタル放送で1440×1080の番組が多いのはこの範囲の中での選択です。
新4K8K衛星放送では、映像はHEVCで2160/60/Pや4320/60/Pなどを、音声はMPEG-4 AACやロスレスのMPEG-4 ALSを使います。MPEG-4 AACでは最大22.2chまで符号化でき、22.2chを5.1chにダウンミックスするときの係数も決められています。映像符号化の比較はH.264とHEVCの違いを扱ったコラムでも取り上げています。
2025年の4.0版では、高度地上デジタルテレビジョン放送に向けて、映像符号化にVVC、音声符号化にMPEG-H 3D audioとAC-4が加わりました。
ARIB STD-B32の3部構成
第1部は映像です。入力フォーマットの走査線数やフレーム周波数、各符号化方式の圧縮と送出の手順、符号化パラメータの制約を決め、方式ごとに運用ガイドラインが付いています。MPEG-2 Videoのガイドラインには、チャンネルを切り替えてから映像が出るまでの時間や、番組の途中で映像フォーマットを切り替えるときの手順も書かれています。
第2部は音声です。サンプリング周波数は32kHz、44.1kHz、48kHzが基本で、4K8K衛星放送は48kHzに限られます。MPEG-2 AACでは1つのストリームで扱える符号化チャンネル数を5.1chまでに制限しています。
第3部は多重化です。PESパケット、セクション、TSパケットの形式と、PMTに書くストリーム形式の識別子などを決めています。4K8K放送のためのTLVパケットやMMTPパケットの形式もここに入っていて、2018年の3.10版からは分量が増えたため3分冊になりました。
ARIB STD-B32で間違えやすい点
国際規格に準拠していても、B32の制約から外れると放送には使えません。たとえばMPEG-4 AVCの場合、1080/60/IはLevel 4、1080/60/PはLevel 4.2、2160/60/PはLevel 5.2というように、映像フォーマットごとにプロファイルとレベルの組み合わせが決まっています。汎用のエンコーダーの設定をそのまま持ち込むと、ここで引っかかります。
表に載っている形式が、すべて実際に放送されているわけでもありません。たとえばMPEG-4 AVCの2160/60/Pには、実際の運用は省令と告示の範囲に限られるという注記が付いています。実際の番組で使う形式と送出の細部は、地上デジタル放送ならTR-B14、BSと110度CSならTR-B15、4K8K衛星放送ならTR-B39の運用規定で確かめます。
よくある質問
ARIB STD-B32は無料で読めますか
英語版はARIBのサイトから無料でダウンロードでき、2018年の3.11-E1は3分冊で公開されています。日本語の最新版(4.1版)は、会員以外はARIB Web Storeでの購入です。
地上デジタル放送の映像はなぜ1440×1080なのですか
B32は1080/60/IのMPEG-2映像で横1920画素と1440画素の両方を認めていて、限られた伝送容量の中で1440画素を選ぶ放送が多いためです。受信機は表示するときに1920画素へ引き伸ばします。
4K放送の映像と音声の方式は何ですか
新4K8K衛星放送の映像はHEVC、音声はMPEG-4 AACとMPEG-4 ALSです。多重化はTSではなくTLVとMMTで、B32の第3部とARIB STD-B60で定められています。
この用語を扱ったコラム
似ている形式との違い
| 名前 | 主に使う場面 | ARIB STD-B32との違い |
|---|---|---|
| HEVC | 4K8K放送の映像 | 映像符号化そのものの国際規格。B32はその中から放送で使うプロファイル、レベル、パラメータの制約を決める |
| ARIB STD-B31 | 地上デジタル放送の電波 | B32で作った信号を電波に載せる伝送方式の規格。符号化と多重化は含まない |
| ARIB STD-B60 | 4K8K放送のMMT | B32の第3部がTLVパケットの多重化を決め、その上でMMTによるメディアの運び方をB60が決める |
関連する用語
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