信号・規格収録送出

3値シンク

Tri-level Sync / サンチシンク

HD以降の映像機器を同期させるための基準信号です。0Vから負、正へ振れて0Vに戻る3つの電圧レベルのパルスで、ブラックバーストより時間の基準点を正確に取れます。

英語表記
Tri-level Sync
用途
HD・4K機器のゲンロック用の基準信号
波形
0Vを中心に約300mVずつ負と正へ振れるパルス
時間の基準点
負から正へ切り替わるときの0Vを横切る点
伝送
75Ω同軸ケーブル、BNC端子
発生源
同期信号発生器(SPG)のHD基準出力
前の世代の基準信号
ブラックバースト(SD用、2値の同期パルス)

SPGの設定画面やカメラのマニュアルで「Tri-level」「3値」という表記を見て、ブラックバーストと何が違うのか迷う人は多いはずです。3値シンクはHD用に作られた基準信号で、1本のBNCケーブルで送る点は同じでも、波形の形と、合わせられるフォーマットの考え方が違います。

3値シンクが使われる場面

放送局やポストプロダクションの設備では、同期信号発生器(SPG)からHD用の3値シンクとSD時代からのブラックバーストの両方を出し、機器ごとに受け付けるほうを分配しています。スタジオのシステムカメラ、スイッチャー、ビデオサーバー、フレームシンクロナイザーのREF INにつながるのがこの信号で、これらをゲンロックして切り替え時の乱れを防ぎます。

撮影の現場で出会うことが増えたのは、LEDウォールを使うバーチャルプロダクションです。LEDプロセッサー、カメラ、映像を描画するサーバーを同じ3値シンクでロックし、LEDの書き換えとシャッターのタイミングを合わせます。3D撮影のように2台のカメラのフレームを完全に一致させたい撮影でも、3値シンクでゲンロックします。

シネマカメラや業務用カムコーダーには、3値シンクを受けるGENLOCK端子を持つ機種があります。ただしミラーレスカメラの多くには端子がありません。

3値シンクの仕組みとブラックバーストとの違い

波形は、0Vの状態から約300mV負に振れ、次に約300mV正に振れて、0Vに戻ります。機器が時間の基準にするのは、負から正へ切り替わる途中で0Vを横切る点です。

ブラックバーストの同期パルスは負の方向だけに振れる2値の信号で、パルスの立ち下がりの半分の高さを基準点にします。この方式だと、ケーブルが長くなって振幅が変わったり直流分がずれたりすると、基準点も動いてしまいます。3値シンクは正と負に同じだけ振れて直流分を持たないので、振幅が変わっても0Vを横切る点は動きにくく、HDの細かい画素クロックでも正確に合わせられます。

3値シンクには、どのフレームレートと走査方式の信号かという情報が波形の間隔そのものに含まれます。1080iと1080p、59.94Hz系と50Hz系では波形の並び方が変わるので、1080i/59.94用の3値シンクと1080p/50用の3値シンクは別の信号です。

3値シンクの設定で間違えやすい点

いちばん多いのは、SPGの出力フォーマットと、ロックさせたい機器の映像フォーマットの食い違いです。カメラを1080p/23.98で回すのに、SPGの3値シンクが1080i/59.94のままだと、機種によってはロックしないか、ロックしてもフレームの位相が合いません。運用するフォーマットを変えたら、SPGの出力設定も一緒に見直します。

SPGの出力端子が複数あり、それぞれ別のフォーマットを出せる機種では、どの端子がどのフォーマットかを取り違えることがあります。ラックの配線表と出力設定を照らし合わせておくと、現場で迷いません。

ケーブルの途中でT字コネクターを使って分岐し、終端(75Ωターミネーター)を付け忘れると、反射で波形が崩れてロックが不安定になります。分配には専用の分配器を使うのが基本です。

よくある質問

3値シンクとブラックバーストはどちらを使えばいいですか

機器のREF INがどちらを受け付けるかで決まります。HDの機器は3値シンクを前提にしていることが多い一方、ブラックバーストでもロックできる機種も少なくありません。設備全体で基準をそろえる必要があるので、既存の機器が受け付ける信号に合わせて選びます。

3値シンクは4Kでも使えますか

使えます。12G-SDIで4Kを扱うスイッチャーなどでも、REF INで3値シンクとブラックバーストのどちらかを受け付ける機種が多くあります。どのフォーマットの基準を受け付けるかは機種ごとに違うので、仕様書のリファレンス入力の欄を確かめます。

3値シンクをオシロスコープで見るとどう見えますか

走査線ごとに、0Vから下に振れてすぐ上に振れ、また0Vに戻るパルスが並んで見えます。上下の振れ幅がほぼ同じで、中心が0Vにあるのが正常な状態です。

似ている形式との違い

名前主に使う場面3値シンクとの違い
ブラックバーストSD時代からの基準信号同期パルスが負の方向だけに振れる2値の信号で色副搬送波のバーストを含む。HD機器でも受け付ける機種は多い
ワードクロックデジタル音声機器の同期音声のサンプル周波数(48kHzなど)をそろえる信号。映像の3値シンクとは別系統で配る
PTPIP伝送の同期パルスではなくネットワーク上の時刻で同期する。ST 2110の設備では3値シンクの代わりになる

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