信号・規格収録送出

HD-SDI

HD Serial Digital Interface / エイチディーエスディーアイ

伝送速度1.485GbpsのSDIで、1080iや720pのハイビジョン映像を非圧縮のまま同軸ケーブル1本で送る規格です。SMPTE ST 292-1として規格化され、放送局や中継現場のHD設備の基準になってきました。

伝送速度
1.485Gbps(59.94Hz系は1.485/1.001Gbps)
規格
SMPTE ST 292-1(もとのSMPTE 292M)
1本で運べる映像
1080iの50・59.94・60、1080pの23.98〜30、720pの50・59.94・60
運べない映像
1080pの50・59.94・60(3G-SDIか2本のデュアルリンクが必要)
エンベデッド音声の規格
SMPTE ST 299-1。48kHz、24ビットのPCMを最大16チャンネル
音声の入る場所
水平帰線区間の補助データ領域(HANC)。4チャンネルずつ4グループ
符号化
10ビット単位のデータをスクランブルしてNRZIで送る
同期の目印
各ラインのEAVとSAVのタイミング基準信号
コネクタ
BNC(75Ω)。同軸での引き回しは100m前後が目安

機材の仕様表で「HD-SDI」と書かれていても、1080pの59.94フレームは入りません。HD-SDIは1.485Gbpsという速度が決まった規格で、その帯域に収まる映像しか1本では運べないためです。HD設備の世代を見分けるときは、まずこの速度を確かめます。

HD-SDIが使われる場面

放送局のHD設備では、長くHD-SDIが基準でした。スタジオのシステムカメラからスイッチャー、モニター、収録機、ルーティングスイッチャー、送出サーバーまでが1.485Gbpsでつながり、1080i/59.94で制作する現場が標準になりました。中継車やサブの配線も同じです。

いまも現役の機材は多く、HDで完結する制作や、4K対応の機材にHDの機器を混ぜる構成では、HD-SDIの入出力が当たり前に使われます。SDIのキャプチャーボードやコンバーター、ビデオサーバーも、3Gや12G対応をうたう製品の多くがHD-SDIの信号をそのまま受けます。

納品や検証の場面でも出てきます。HDで仕上げた素材をテープや収録機に落とすとき、SDIの経路を通すのでフォーマットの取り違えが起きないよう、1080i/59.94なのか1080p/29.97なのかを確認します。

HD-SDIの仕組みと音声・VANCの扱い

映像は圧縮せず、画素のデータを10ビット単位の直列の信号として送ります。同じ値が長く続くと受け手がクロックを取り出せないので、送出時にスクランブルをかけ、NRZIの形で並べます。各ラインの先頭と末尾にはSAVとEAVというタイミング基準信号が入り、どこからが映像でどこからが帰線区間かを示します。

映像の無い期間には、映像以外のデータを載せる領域があります。音声はSMPTE ST 299-1に従って水平帰線区間の側に埋め込まれ、48kHz、24ビットのPCMを4チャンネルずつ4グループ、合わせて最大16チャンネル運べます。タイムコードや字幕、メタデータは垂直帰線区間側のVANCに入ります。1本のケーブルで番組に必要な情報がそろうのは、この領域があるためです。

複数の機器を切り替えて使う設備では、ゲンロックで各機器のフレームの頭をそろえます。基準信号にはブラックバーストか3値シンクを使います。

HD-SDIと3G-SDI・12G-SDIの違い

違いは速度と、その速度で運べる映像です。HD-SDIの1.485Gbpsでは、1080iや720p、1080pの30フレーム以下までが1本に収まります。1080pの50や59.94フレームは倍のデータ量になるため、3G-SDIが必要です。3G-SDIが普及する前は、HD-SDIを2本使うデュアルリンクでこれを運んでいました。

4Kでは、HD-SDIの8倍の速度を持つ12G-SDIを使います。HD-SDIの機材と4Kの機材を混ぜるときは、アップコンバーターやダウンコンバーターを挟むことになります。設備全体をIPへ移す動きについては、ST 2110を扱ったコラムで整理しています。

HD-SDIで映らない・音が出ないとき

映らない原因で多いのは、フォーマットの食い違いです。送り側が1080p/59.94で出していて受け側がHD-SDIしか受けない、50Hz系と59.94Hz系が混ざっている、といった場合は画面が真っ黒のまま何も出ません。機器のステータス表示で、入力として認識されている形式を確かめます。

音が出ないときは、エンベデッド音声のチャンネルの割り当てを疑います。グループ1の1・2チャンネルにステレオが入っている前提の機器に、グループ2から音声を載せた信号を入れると無音になります。受け側でどのチャンネルを拾う設定になっているかを見ます。

ケーブルの品質や長さも原因になります。HD-SDIはSD-SDIより減衰に弱く、同軸での引き回しは100m前後が目安です。長い距離は光ファイバーへの変換で延ばします。

よくある質問

HD-SDIで1080pは送れますか

フレームレートによります。1080pの23.98から30までなら1本で送れますが、50や59.94、60は帯域に収まりません。この場合は3G-SDI、または2本のHD-SDIを使うデュアルリンクが必要です。

HD-SDIとSMPTE 292Mは違うものですか

同じものを指します。古い規格番号がSMPTE 292Mで、現在はSMPTE ST 292-1として発行されています。古い機材の仕様表には292Mと書かれていることがあります。

HD-SDIの音声は何チャンネルまで入りますか

SMPTE ST 299-1で、48kHz、24ビットのPCMを最大16チャンネル運べます。4チャンネルずつ4つのグループに分かれていて、機器によっては使えるグループが限られることがあります。

この用語を扱ったコラム

似ている形式との違い

名前主に使う場面HD-SDIとの違い
SDI規格群の総称SD-SDIから12G-SDIまでを含む呼び名。HD-SDIはそのうち1.485Gbpsの世代
デュアルリンクHD-SDI1080pや4:4:4の伝送HD-SDIを2本使って1本では収まらない映像を運ぶ方式(SMPTE ST 372)。3G-SDIの登場で使われる場面は減った
3G-SDI1080pの50・60フレーム伝送速度が2倍の2.97Gbps。HD-SDIでは運べない1080pの高フレームレートを1本で送れる
12G-SDI4Kの1本伝送11.88Gbps。HD-SDIの8倍で、4Kの60フレームを1本で送る

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