VANC
Vertical Ancillary Data / ブイアンク
SDIの映像信号のうち、画面に映らない垂直帰線の区間に載せる補助データのことです。字幕、タイムコード、AFD、CM差し替えの合図などが、映像と同じケーブルで同期して運ばれます。
- 正式名称
- Vertical Ancillary Data(垂直補助データ)
- パケットの形式
- SMPTE ST 291-1(DID・SDIDで種類を識別)
- 対になる領域
- HANC(水平の補助データ領域。エンベデッド音声など)
- 主な中身
- 字幕、タイムコード(ATC)、AFD、SCTE 104
- 日本の字幕
- ARIB STD-B37で形式を規定
- ファイルでの保存
- MXFの中にSMPTE 436Mの形で格納する
- IP伝送
- SMPTE ST 2110-40でANCデータを運ぶ
字幕付きの番組をSDIで受けたのに、キャプチャしたファイルには字幕が入っていない。この現象の原因はたいていVANCにあります。放送局内の字幕は映像に焼き込まれているのではなく、SDI信号の見えない領域であるVANCにデータとして載っていて、取り込む機器やソフトがそこを捨てると消えてしまいます。
VANCが使われる場面
日本の放送で代表的なのは字幕です。テレビ局では、字幕データをARIB STD-B37の形式でHD-SDIのVANCに載せ、映像と一緒に局内を流します。字幕付きの番組をHDCAMのテープで納品していた時代も、字幕はテープのVANCに記録されていました。ファイル納品になった今は、同じデータがMXFの中に格納されます。
字幕以外にもさまざまなデータがVANCを使います。代表的なものは次の通りです。
- タイムコード:SMPTE ST 12-2のATC(Ancillary Time Code)
- 画面の比率の情報:AFDとバーデータ(SMPTE ST 2016-3)
- CMの差し替えの合図:SCTE 104のメッセージ
- 北米のクローズドキャプション:CEA-708のデータ
送出の系統では、これらを映像と同期させたまま扱えることが重要です。字幕が1フレームずれるだけで、画面の切り替わりと字幕の表示が合わなくなります。
VANCの仕組み、HANCとの違い
SDIの信号には、実際に画面に映る映像の範囲のほかに、ブラウン管の時代に走査線を戻すために使っていた帰線の区間が残っています。このうち、フレームの上下にあたる垂直の帰線区間がVANC、各走査線の左右にあたる水平の帰線区間がHANCです。
どちらも、SMPTE ST 291-1で決まった補助データパケットの形でデータを運びます。パケットの先頭にはDIDとSDIDという識別子があり、受け取った機器はこの値で「字幕のデータか、タイムコードか」を判断します。HANCは容量が大きいのでエンベデッド音声に使われ、VANCは字幕や制御情報のような比較的小さなデータに使われます。
IP化した局内では、SMPTE ST 2110-40という規格で同じ補助データパケットをIPで運びます。SDIからIPへ移っても、パケットの中身は引き継がれます。
VANCのデータが消える・引き継がれないとき
VANCは、機器やソフトが対応していなければ黙って落ちます。原因は大きく2つです。
1つめは、変換機やキャプチャ機器がVANCを通さない設定になっているケースです。フレームシンクロナイザーやアップ・ダウンコンバーターには、補助データを通過させるか消すかの設定を持つ機種があります。
2つめは、ファイル化の段階で落ちるケースです。一般的な編集ソフトは映像と音声だけを取り込み、VANCは読みません。MP4やMOVに書き出すと字幕のデータはまず残らないので、放送用に保存するならVANCをトラックとして持てるMXFを使い、SMPTE 436Mの形で格納します。
よくある質問
VANCの字幕データは編集ソフトで見られますか
一般的な編集ソフトでは表示できません。専用の字幕ビューアや、ARIBの字幕データを解釈できるツールで取り出す必要があります。MXFに入った字幕の扱いはMXFの中身の構造で詳しく扱っています。
VANCとHANCの違いは何ですか
どちらもSDI信号の画面外にある補助データの領域です。VANCはフレームの上下の区間で字幕や制御情報に、HANCは各走査線の左右の区間で主にエンベデッド音声に使われます。
ARIB STD-B37とVANCの関係を教えてください
VANCは信号の中の領域、ARIB STD-B37はその領域に載せる日本のデジタル字幕データの形式です。B37の字幕パケットがVANCに載って局内を流れる、という関係になります。
この用語を扱ったコラム
似ている形式との違い
| 名前 | 主に使う場面 | VANCとの違い |
|---|---|---|
| SMPTE 436M | MXFへの格納 | VANCをファイルに入れるための規格。VANCは信号の中の領域そのもの |
| VITC | アナログ時代のタイムコード | アナログ映像の垂直帰線にタイムコードを書き込む方式。デジタルのVANCの前身にあたる |
| クローズドキャプション | 表示を切り替えられる字幕 | 字幕の見せ方の呼び名。放送局内ではそのデータがVANCに載って運ばれる |
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