地上放送高度化方式

高度地上デジタルテレビジョン放送の伝送方式 / チジョウホウソウコウドカホウシキ

現行の地上デジタル放送より多くの情報を同じ6MHzの帯域で送るための伝送方式です。ARIBがSTD-B79(ISDB-T2、ISDB-T1.5)とSTD-B80(ISDB-T3)として2025年3月に規格を策定しています。

規格
ARIB STD-B79(ISDB-T2とISDB-T1.5)、ARIB STD-B80(ISDB-T3)
策定
どちらも1.0版が2025年3月25日、1.1版が2026年4月16日
策定団体
電波産業会(ARIB)
誤り訂正
LDPC符号
変調
256QAM-NUCから4096QAM-NUCまでの多値変調
ISDB-T1.5
現行の地上デジタルテレビジョン放送と階層分割多重する方式
ISDB-T3
複数のシンボル長のOFDMを使い、時間方向と周波数方向に複数の層を組み合わせるフレーム構成。移動受信向けのサービスは対象外
対象のサービス
標準テレビジョン放送、高精細度テレビジョン放送、超高精細度テレビジョン放送
現行方式の規格
ARIB STD-B31(ISDB-T)

地上デジタル放送の1チャンネルは6MHzと決まっていて、その中で送れる情報の量は伝送方式で決まります。高度化方式は、この枠を変えずに中身の詰め方を新しくする取り組みで、ARIBの規格としては2025年3月に形になりました。名前がISDB-T2、ISDB-T1.5、ISDB-T3と3つ並ぶため、どれが何なのかが分かりにくくなっています。

高度化方式が議論される場面

背景にあるのは周波数の使い方です。現行のISDB-Tは2003年に始まった方式で、その後に確立した誤り訂正や変調の技術は入っていません。同じ帯域で送れる量が増えれば、4Kの番組を地上波で送る、1つのチャンネルに複数の番組を載せる、中継局の数を減らすといった選択肢が生まれます。

もう1つは受信機の入れ替えという制約です。伝送方式を変えると、いま家庭にあるテレビでは受信できなくなります。この制約をどう扱うかで、規格の作りが分かれています。

放送設備の側から見ると、送信所の設備更新や中継回線の設計にも関わります。どの方式を前提に投資するかは、規格が決まったことと、実際に放送で使われることが別の話である以上、慎重に扱われる論点です。

更新が及ぶのは親局だけではありません。全国に置かれた中継局まで同じ機器の入れ替えが必要になるため、総務省の報告でも、導入方策の在り方は過度な負担が生じないよう慎重に検討することが必要だとされています。

3つの方式の違い

ARIB STD-B79は、ISDB-T2とISDB-T1.5という2つを定めています。ISDB-T2は現行方式を置き換える形の伝送方式で、誤り訂正にLDPC符号を、変調に256QAM-NUCから4096QAM-NUCまでの多値変調を使います。ISDB-T1.5は、現行の地上デジタルテレビジョン放送と階層分割多重する方式です。いまの放送を残したまま、同じ帯域にもう1つの層を重ねる作りになっています。

ARIB STD-B80が定めるISDB-T3は、複数のシンボル長のOFDMを使い、時間方向と周波数方向に複数の層を組み合わせるフレーム構成を持ちます。対象は標準テレビジョン放送から超高精細度テレビジョン放送までで、移動受信向けのサービスは対象から外れています。1.1版では、MISOや送信所の識別符号、PAPRを下げる技術が附属書として、送信設備に関する条件がガイドラインとして加わりました。

3つに共通するのは、誤り訂正にLDPC符号を使うことと、現行方式の64QAMより上の多値変調を使うことです。同じ電波の強さでより多くのビットを載せるため、誤り訂正の性能を上げて成立させるという組み立てになっています。

高度化方式で間違えやすい点

  • 規格が策定されたことと、実際の放送で使われることは別です。どの方式をいつ使うかは、周波数の使い方や受信機の普及と合わせて決まる話で、ARIBの規格策定とは別の手続きになります
  • 現行の放送を指すのは引き続きARIB STD-B31です。STD-B79とSTD-B80が出たあとも、いま受信しているのはB31の方式です
  • ISDB-T1.5は、現行方式の置き換えではありません。現行の放送と重ねる方式なので、位置づけがISDB-T2やISDB-T3とは異なります
  • 4K放送と高度化方式は別の話です。いま視聴できる4K放送は衛星の新4K8K放送で、伝送方式もMMT-TLVとISDB-S3という別の系統です

よくある質問

地上デジタル放送の高度化とは何ですか

同じ6MHzのチャンネルで、いまより多くの情報を送れるようにする伝送方式の更新です。ARIBはSTD-B79(ISDB-T2、ISDB-T1.5)とSTD-B80(ISDB-T3)を2025年3月に策定しており、どちらも誤り訂正にLDPC符号、変調に256QAM-NUC以上の多値変調を使います。

いまのテレビで高度化方式の放送は見られますか

ISDB-T2やISDB-T3は現行のISDB-Tとは別の伝送方式なので、現行の受信機ではそのままでは受信できません。ISDB-T1.5は現行の放送と階層分割多重する方式として規定されており、既存の放送と同じ帯域に重ねる形を取ります。

ISDB-T2とISDB-T3の違いは何ですか

どちらもARIBが2025年に策定した高度化方式ですが、規格が分かれています。ISDB-T2とISDB-T1.5はSTD-B79、ISDB-T3はSTD-B80です。ISDB-T3は複数のシンボル長のOFDMを組み合わせるフレーム構成を持ち、移動受信向けのサービスを対象に含めていません。

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名前主に使う場面地上放送高度化方式との違い
ARIB STD-B31現行の地上デジタル放送いま放送されているISDB-Tの伝送方式。高度化方式はSTD-B79とSTD-B80という別の規格になっている
ISDB-S3新4K8K衛星放送衛星側の高度化。LDPCと多値変調で容量を増やす考え方は近いが、伝送路も規格も別
ATSC 3.0米国などの地上放送OFDMとLDPCを使う点は共通。日本はISDB-Tの系統の上で高度化を進めている
DVB-T2欧州などの地上放送同じくLDPCと高次の変調で容量を増やした方式。採用国が違う

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