ARIB STD-B31
地上デジタルテレビジョン放送の伝送方式 / アライブエスティーディービーサンジュウイチ
日本の地上デジタルテレビジョン放送の伝送方式(ISDB-T)を定めたARIBの標準規格です。13セグメントのOFDMの変調、誤り訂正、階層伝送、送信のパラメータと、送信所や中継局の運用ガイドラインがまとめられています。
- 正式名称
- 地上デジタルテレビジョン放送の伝送方式
- 策定団体
- 電波産業会(ARIB)
- 版
- 1.0版(2001年5月)策定。2.3版(2025年10月)が最新
- 適用範囲
- UHF帯を使う地上デジタルテレビジョン放送
- 変調
- 13セグメントのOFDM。キャリア変調はDQPSK、QPSK、16QAM、64QAM
- モード
- モード1〜3(全キャリア数1405/2809/5617)
- ガードインターバル比
- 1/4、1/8、1/16、1/32
- 誤り訂正
- 内符号は畳み込み符号(符号化率1/2〜7/8)、外符号はRS(204,188)
- 付属
- 運用ガイドライン(送信スペクトルの配置、階層伝送、同期化、STL/TTLへの信号伝送、ACデータ伝送)
送信機や中継局の設備、チューナーの復調部、放送波の測定器の仕様書に「ARIB STD-B31準拠」とあれば、電波としての地上デジタル放送の作り方と受け方をこの規格に合わせることを意味します。方式の名前がISDB-Tで、その中身を数値まで書き下した規格書がB31です。
ARIB STD-B31が使われる場面
読み手の中心は、放送局の送信・伝送の技術者と、送信機、中継局の装置、復調のLSI、測定器を作るメーカーです。演奏所と送信所、送信所と中継局を結んで放送のTSを運ぶSTL/TTLの伝送も、B31の付属に手法がまとめられているので、伝送装置の設計ではここを参照します。
同じ周波数で親局と中継局を並べる単一周波数ネットワーク(SFN)の設計では、付属の同期化の運用ガイドラインが要になります。回線設計の考え方は参考資料に載っています。
緊急地震速報のように急ぐ情報も、B31の範囲です。2009年の1.8版で、AC信号を使って地震動警報情報を伝える方式が加わりました。受信装置の規格ARIB STD-B21の同じ年の改定で、受信機側の対応も規定されています。
海外の案件で参照されることもあります。2011年の2.0版で、ITU-Rの勧告との整合をとるため、6MHz幅に加えて7MHz、8MHz幅のシステムの伝送パラメータと情報レートが付録に入りました。
ARIB STD-B31の仕組みとパラメータ
1つのチャンネルを14分の1の幅のOFDMセグメントに分け、そのうち13セグメントを並べて送ります。セグメント単位で最大3つの階層に分けられ、階層ごとにキャリア変調、畳み込み符号の符号化率、時間インターリーブの長さを選べます。携帯受信向けのワンセグは、この仕組みのうちの部分受信の階層として扱われます。
モードはキャリアの間隔の違いで3種類あり、モード1で約3.968kHz、モード3で約0.992kHzです。ガードインターバル比は1/4から1/32まで4通りで、長いほど遅れて届く電波に強くなり、その分運べるデータは減ります。13セグメントすべてを同じパラメータにした場合、最も多く運べる64QAM、符号化率7/8、ガードインターバル比1/32の組み合わせで約23.2Mbpsです。
誤り訂正は、188バイトのTSパケットに16バイトのパリティを付けるRS(204,188)の外符号と、畳み込み符号の内符号の二重構成です。受信機への制御情報はTMCC信号で送られ、階層の構成や変調のパラメータが変わってもこれを読んで追従します。
ARIB STD-B31で間違えやすい点
B31は電波の区間の規格で、映像や音声の符号化、番組の多重化は含みません。それらはARIB STD-B32、番組情報はSTD-B10が受け持ちます。「B31準拠のエンコーダー」のような書き方を見たら、どの層の話かを確認したほうが安全です。
表に並ぶ最大のビットレートは、実際の放送で使われている値ではありません。実際の放送では、雑音への強さと伝送容量の折り合いを見て、より頑丈なパラメータを選んで運用しているため、使える容量はそれより小さくなります。地デジの1チャンネルで運べる容量と周波数の関係は、電波オークションを扱ったコラムでも触れています。
次の世代の規格とも混同しやすくなりました。2025年に高度地上デジタルテレビジョン放送の伝送方式としてSTD-B79(ISDB-T2、ISDB-T1.5)とSTD-B80(ISDB-T3)が策定され、B31の2.3版はそれに合わせて用語を追加しています。現在の地上デジタル放送の方式を指すのは、引き続きB31です。
よくある質問
ARIB STD-B31とISDB-Tは同じものですか
ISDB-Tは方式の呼び名で、B31はその方式を定めた日本の規格書です。国際的にはITU-Rの勧告にもISDB-Tが入っていますが、日本の放送設備が準拠するのはB31です。
ARIB STD-B31は無料で読めますか
英語版(2.2-E1)はARIBのサイトから誰でも無料でダウンロードできます。日本語の最新版(2.3版)は、会員以外はARIB Web Storeでの購入です。
ワンセグの方式もARIB STD-B31に含まれますか
含まれます。ワンセグは13セグメントの中央の1セグメントを部分受信の階層として使うサービスで、その部分受信の仕組みがB31の中で定義されています。
この用語を扱ったコラム
似ている形式との違い
| 名前 | 主に使う場面 | ARIB STD-B31との違い |
|---|---|---|
| ISDB-T | 地上デジタル放送の方式の呼び名 | 方式そのものの名前。B31はその方式の変調や送信条件を細かく書いた規格書 |
| ARIB STD-B79 / B80 | 高度地上デジタルテレビジョン放送 | ISDB-T2とISDB-T1.5(B79)、ISDB-T3(B80)の伝送方式。2025年に策定された次の世代の規格 |
| ARIB TR-B14 | 地上デジタル放送の運用 | B31が電波の送り方を決め、TR-B14が番組の送出や受信機の機能まで含めた運用を決める |
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