AES3
AES3(AES/EBU デジタルオーディオインターフェース) / エーイーエススリー
業務用のデジタル音声を機器間で受け渡すための規格で、1本のケーブルで2チャンネルの非圧縮音声を送ります。AESとEBUが共同で作ったため、現場ではAES/EBUと呼ばれることが多いです。
- 策定団体
- AES(Audio Engineering Society)、EBUと共同
- 初版
- 1985年
- チャンネル数
- 1本あたり2チャンネル(ステレオまたはモノラル2系統)
- 量子化ビット数
- 最大24bit
- サンプリング周波数
- 48kHzが基本。44.1kHz、32kHz、拡張で192kHzまで
- ケーブルと端子(平衡)
- 110Ωのツイストペア、XLR端子
- ケーブルと端子(不平衡)
- 75Ω同軸、BNC端子(AES-3id)
- 関連規格
- IEC 60958(民生用のS/PDIFと同じ系統)
ミキサーの背面に「AES/EBU」と書かれたXLR端子があり、マイク用のケーブルでつないだら音が途切れる。AES3は、見た目はアナログのマイク端子と同じでも、中身は2チャンネル分のデジタル音声が流れる別物です。ケーブルの特性や同期の取り方を知っておくと、こうしたトラブルの多くは避けられます。
AES3(AES/EBU)が使われる場面
放送局やMAスタジオでは、デジタルミキサー、レコーダー、エフェクター、ビデオサーバーの音声入出力にAES3が使われてきました。1本で2チャンネルなので、8チャンネルの音声なら4本のケーブルを使います。
映像と音声を1本にまとめる場面でも出てきます。SDIの映像に音声を埋め込むエンベッダーや、逆に取り出すディエンベッダーの音声端子はAES3が一般的です。SDIに埋め込まれた音声の中身も、AES3の形のデータです。
放送の多チャンネル音声を運ぶDolby Eも、AES3の2チャンネル分の枠を使って送ります。見た目は普通のAES3ですが、中身は圧縮された多チャンネルのデータなので、そのままスピーカーで鳴らすと大きなノイズになります。
AES3の仕組み
AES3は、音声のサンプルを1つずつ32bitの「サブフレーム」に入れ、左右2チャンネル分のサブフレームで1フレームを作ります。サブフレームには最大24bitの音声データのほか、データが正しいかを示すビットや、チャンネルステータスと呼ばれる付随情報の1bitが入ります。192フレームで1ブロックとなり、そのブロックでチャンネルステータスが1組そろいます。サンプリング周波数や、中身が通常の音声か圧縮データかといった情報はここに入っています。
信号はバイフェーズマークという符号で送られます。クロックの情報が信号自体に含まれるので、受け側は別のクロック線がなくてもデータを取り出せます。
AES3の接続で間違えやすい点
平衡のAES3は110Ωのケーブルを前提にしています。アナログのマイクケーブルでも短ければ音は出ますが、長くなると波形が崩れて、音の途切れやプチッというノイズが出ます。AES/EBU用と書かれた110Ωのケーブルを使うのが基本です。
放送設備では、75Ωの同軸ケーブルとBNC端子で送る不平衡のAES-3idもよく使います。映像用の同軸配線やパッチ盤と共通にできるためです。XLRとBNCをつなぐときは、インピーダンスを変換するバランの入ったアダプターが必要です。
同期も見落とされやすい点です。デジタル音声の機器が複数あると、それぞれのクロックが少しずつずれ、定期的にプチッという音が出ます。スタジオでは、ワードクロックやAES11で定義された基準信号を配って全機器のサンプリング周波数をそろえます。映像と一緒に使う設備では、その基準自体を映像のゲンロックと同じ発生源から作ります。
よくある質問
AES/EBUとAES3は同じものですか
同じ規格を指しています。AES3が正式な規格名で、AESとEBUが共同で作った経緯からAES/EBUという呼び方が広まりました。機器の端子にはAES/EBUと書かれていることが多いです。
AES/EBUとS/PDIFはつなげますか
データの形式は近いものの、電圧やインピーダンス、端子が違うので、直接つなぐと認識しないことがあります。変換アダプターやフォーマット変換機を使うのが確実です。チャンネルステータスの中身も業務用と民生用で違い、機器によっては受け付けません。
AES3で5.1chを送れますか
1本は2チャンネルなので、非圧縮の5.1chなら3本を使います。1本で送りたい場合は、Dolby Eのように圧縮した多チャンネルのデータをAES3の枠に載せる方法があります。
似ている形式との違い
| 名前 | 主に使う場面 | AES3との違い |
|---|---|---|
| S/PDIF | 民生のオーディオ機器 | 同じIEC 60958系のデータ形式だが電気的な仕様が違い、RCA端子や光端子を使う。業務用機器とそのままつなぐと認識しないことがある |
| MADI | 多チャンネルの一括伝送 | 1本で最大64チャンネルを送る。AES3は1本2チャンネル |
| SDIエンベデッド音声 | 映像と一緒に音声を運ぶ | 映像信号の隙間に音声を埋め込む方式。AES3の音声をそのまま載せられる |
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