ISDB-T
Integrated Services Digital Broadcasting - Terrestrial / アイエスディービーティー
日本の地上デジタル放送の伝送方式です。6MHzのチャンネルを13のセグメントに分けてOFDMで送り、固定受信のハイビジョンと携帯向けのワンセグを1つの電波で同時に届けられます。ARIBが策定し、ブラジルなど中南米の国々でも採用されています。
- 策定団体
- ARIB(電波産業会)
- 伝送方式の規格
- ARIB STD-B31
- 国際勧告
- ITU-R BT.1306
- 変調
- 13セグメントに分けたOFDM(BST-OFDM)
- チャンネル
- 6MHz幅。日本ではUHFの13〜52ch
- 多重化
- MPEG-2 TS
- 日本の映像・音声
- MPEG-2 Video(ハイビジョンは1440×1080が多い)、MPEG-2 AAC
- 字幕
- ARIB STD-B24
仕様書や海外の案件資料で「ISDB-T」と書かれていたら、日本の地上デジタル放送の電波の送り方を指しています。番組ファイルの形式や画質の規格ではなく、放送局の送信所から家庭のアンテナまでの区間を決めた規格です。
ISDB-Tが使われる場面
日本では2003年12月1日に東京・名古屋・大阪の3大都市圏で地上デジタル放送が始まり、2011年7月24日にアナログ放送が終わりました(岩手・宮城・福島の3県は2012年3月31日)。いまテレビのアンテナで受けている地上波は、すべてこの方式です。海外では、ブラジルが映像にH.264を使う派生版(ISDB-Tb)を採用したほか、中南米の多くの国やフィリピンなどでも採用されています。
放送の仕事でISDB-Tを直接扱うのは、送出マスターから送信所までの伝送系、中継局の設計、受信機やチューナーの開発、電波の監視といった分野です。制作や編集の工程で意識することはあまりありません。とはいえ地デジの録画ファイルを検証に使う、字幕の出方を放送波で確かめるといった場面では、中身がISDB-Tで運ばれたTSであることを前提に機材やソフトを選ぶことになります。
ISDB-Tの仕組み
1つのチャンネルは6MHz幅で、実際に電波が占める帯域はそのうち約5.6MHzです。これを13のセグメントに分け、最大3つの階層にまとめて、それぞれ違う変調方式で送れるのがISDB-Tの特徴です。
日本の地上デジタル放送では、中央の1セグメントを携帯向けのワンセグに、残りの12セグメントを家庭のテレビ向けに使う運用が一般的です。ワンセグの階層は雑音に強いQPSKで、固定受信の階層は1回に多くのデータを運べる64QAMで送ります。電波の強さが同じでも、スマホは弱い電波でも受かる階層を、テレビは多くのデータを運べる階層を受ける、という分担です。
OFDMにはガードインターバルという余白があり、遅れて届く反射波の影響を受けにくくなっています。この性質のおかげで、同じ周波数の中継局を並べる単一周波数ネットワーク(SFN)を組めます。電波に載っているのはTSで、1つのチャンネルの中で標準画質の番組を2〜3本同時に流すマルチ編成も、このTSの中の構成で決まります。字幕はARIB STD-B24の形式でTSに入って送られます。
ISDB-Tの受信や録画で間違えやすい点
受信や録画の現場では、次の取り違えがよく起きます。
- 物理チャンネル(13〜52ch)とリモコンの番号は別物で、同じ局でも地域によって物理チャンネルが違う
- 録画したTSにはコピー制御がかかっていることが多く、録画機の外へそのまま持ち出せない
- ブラジルなどのISDB-Tbは映像がH.264なので、日本のMPEG-2前提のチューナーでは映像を復号できない
字幕の制作から送出までの流れは、ARIB STD-B36を解説したコラムで詳しく扱っています。
よくある質問
ISDB-Tとは何の略ですか
Integrated Services Digital Broadcasting - Terrestrialの略で、「統合デジタル放送サービスの地上波版」という意味です。同じ系統に衛星向けのISDB-Sがあります。
ワンセグはISDB-Tの一部ですか
一部です。13セグメントのうち中央の1セグメントを携帯向けに使うのがワンセグで、別の電波ではなく、同じチャンネルの中で家庭用の放送と一緒に送られています。
ISDB-Tで4K放送は見られますか
見られません。日本の地上デジタル放送はハイビジョン(2K)までで、4K・8Kの放送は衛星を使った新4K8K衛星放送として別の方式で送られています。
この用語を扱ったコラム
似ている形式との違い
| 名前 | 主に使う場面 | ISDB-Tとの違い |
|---|---|---|
| ISDB-S | BS・110度CSのデジタル放送 | 同じARIB系統の衛星向け伝送方式。セグメント分割はなく、衛星の広い帯域を使う |
| ATSC | 北米・韓国の地上デジタル | 最初の世代は単一の搬送波を使う8VSB変調で、日本の受信機では受からない |
| DVB-T | 欧州などの地上デジタル | 欧州で策定されたOFDMの方式。日本の方式とは受信機の互換がない |
| MMT・TLV | 新4K8K衛星放送 | 伝送方式ではなく多重化の方式。地上デジタル放送はMMTではなくTSで多重化している |
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