配信・伝送送出配信

MMT・TLV

MPEG Media Transport / Type Length Value / エムエムティー・ティーエルブイ

新4K8K衛星放送で映像や音声、字幕を運ぶための多重化の仕組みです。MMTはIPを前提にしたメディアの運び方の規格で、TLVはそのIPパケットを放送波に載せるための入れ物を指します。従来のMPEG-2 TSに代わるものです。

MMTの規格
ISO/IEC 23008-1(MPEG-H Part 1)
放送での運用規定
ARIB STD-B60(MMTによるメディアトランスポート方式)
TLVの多重化
ARIB STD-B32 第3部
使われている放送
新4K8K衛星放送(2018年12月1日開始)
衛星の伝送方式
ARIB STD-B44(高度広帯域衛星デジタル放送)
中に入る主な形式
映像はHEVC、音声はMPEG-4 AACとMPEG-4 ALS
字幕
TTMLを土台にしたARIB-TTML(ARIB STD-B62)

4Kのチューナーやレコーダーの仕様表、放送機器のカタログで「MMT/TLV対応」と書かれているのは、新4K8K衛星放送の電波に載っている多重化の方式に対応しているという意味です。地上デジタル放送やBSデジタルが使ってきたTSとは別の仕組みなので、TSを前提にした機器やソフトはそのままでは扱えません。

MMT・TLVが使われる場面

いちばん身近なのは、2018年12月1日に始まった新4K8K衛星放送です。BSと110度CSの4K・8K放送は、映像をHEVCで、音声をMPEG-4 AACやロスレスのMPEG-4 ALSで符号化し、それをMMTで束ねて送っています。HDRの方式にはHLGが採用されました。受信する側では、4Kテレビや4Kチューナー、4K対応レコーダーがMMT/TLVを解いて映像を取り出します。

制作や送出の現場では、局内の素材や完パケはXAVCなどのファイルで扱い、送出の最終段でMMTに組み立てるのが一般的です。MMT・TLVを直接扱うのは、送出マスターの多重化装置、受信機やレコーダーの開発、ケーブルテレビなどの再送信設備、放送波の監視装置といった分野になります。ARIB STD-B60は2025年3月の2.0版で、高度地上デジタルテレビジョン放送に関する規定も加わりました。

MMT・TLVの仕組み

2つの層に分けると理解しやすくなります。

  • MMTは、映像や音声を再生の単位(MPU)に分け、ISOBMFFに近い形でIPのパケットに載せる運び方の規格です。再生の時刻は協定世界時(UTC)で表すため、放送波とネット回線で届いた素材を同じ時計で合わせられます
  • TLVは、そのIPパケットを放送の伝送路に載せるための入れ物です。種類と長さと中身の3つを並べた可変長の形式で、IPのヘッダーを圧縮して載せる仕組みも持っています

これに対してTSは、188バイトの固定長パケットをPIDという番号で振り分け、放送の中の時計で時刻を合わせます。放送だけで完結する前提の設計なので、ネットと組み合わせる用途には向きませんでした。MMTはこの点を見直し、放送と通信の両方で同じ形のまま運べることを目指しています。

字幕も変わりました。TSの放送ではARIB STD-B24の形式で字幕を送っていましたが、4K8K放送ではTTMLを土台にしたARIB-TTMLが使われ、字幕の交換用ファイル形式はARIB STD-B69で定められています。

MMT・TLVで間違えやすい点

受信機でTSを扱っていた感覚のまま進めると、次のようなところでつまずきます。

  • 一般的な変換ソフトや編集ソフトの多くはTSを前提にしており、MMT・TLVのストリームはそのままでは読み込めないことが多い
  • 2K放送の字幕処理(ARIB STD-B24)をそのまま4K放送に使うことはできず、ARIB-TTMLに合わせた処理が別に要る
  • 4K8K放送のスクランブルは従来のB-CASではなくACASという方式で、受信機側の対応も別になる

4K放送の映像を検証や解析に使いたいときは、どの形式で取り出せるかを最初に確かめておくと、後の工程が組みやすくなります。

よくある質問

MMTとは何の略ですか

MPEG Media Transportの略で、ISO/IEC 23008-1として規格化されています。日本の放送での使い方は、ARIB STD-B60で細かく定められています。

MMTとTSの違いは何ですか

TSは固定長のパケットと放送内の時計を使う、放送だけで完結する前提の多重化方式です。MMTはIPを前提にし、時刻をUTCで持つので、放送とネット配信で同じ運び方ができます。

地上デジタル放送もMMTになりますか

現在の地上デジタル放送はTSで送られています。ARIB STD-B60の2.0版で高度地上デジタルテレビジョン放送の規定が加わりましたが、TSを前提にした今の地デジ受信機が、そのままMMTの放送を受けられるわけではありません。

似ている形式との違い

名前主に使う場面MMT・TLVとの違い
TS地上デジタル・BSデジタル放送188バイトの固定長パケットとPIDで多重化する従来の方式。時刻の基準も放送の中の時計(PCR)で持つ
HLSネット配信HTTPで数秒ずつのファイルを取りに行く方式。MMTは放送波とネットの両方で同じ運び方をすることを想定している
ISDB-T地上デジタル放送の伝送電波の変調と伝送の方式。多重化はTSを使っている

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