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QAM

Quadrature Amplitude Modulation / キューエーエム

位相が90度違う2つの搬送波の振幅を組み合わせて、1つのシンボルに複数のビットを載せる変調方式です。64QAMなら1シンボルで6ビットを運べますが、多値にするほど必要なC/Nも上がります。

正式名称
Quadrature Amplitude Modulation(直交振幅変調)
考え方
位相が90度違うIとQの2つの搬送波の振幅を組み合わせて信号点を作る
1シンボルのビット数
QPSK 2ビット、16QAM 4ビット、64QAM 6ビット、256QAM 8ビット
トレードオフ
多値にするほど運べるビットは増え、信号点の間隔が狭くなって雑音に弱くなる
地上デジタル放送(ISDB-T)
階層ごとにDQPSK、QPSK、16QAM、64QAMから選ぶ(ARIB STD-B31)
日本の運用例
固定受信の階層は64QAM、ワンセグの階層はQPSK
ケーブルテレビ
デジタルケーブルの伝送で64QAMや256QAMが使われる
測り方
コンスタレーション(信号点配置)の広がりとMER、BERで評価する

測定器の画面に、点が格子状に並んだ図が出ます。あれがQAMのコンスタレーションで、点の広がり方が受信状態そのものです。点がにじんで隣と重なり始めると、誤り訂正で支えきれずブロックノイズや受信不能になります。64QAMや256QAMという数字は、その格子に並ぶ点の数です。

QAMが使われる場面

日本の地上デジタル放送では、家庭のテレビが受ける階層に64QAMが使われています。同じ電波の中のワンセグの階層はQPSKで、こちらは1シンボルに2ビットしか載せないかわりに、弱い電波でも受かります。同じ送信所から出る電波の中で、多値の度合いを変えて用途を分けているわけです。階層ごとの選択肢はARIB STD-B31が定めています。

地上放送高度化方式のキャリア変調方式には、QPSKに加えて16QAM-NUCから4096QAM-NUCまでの不均一コンスタレーションが並びます。多値数を上げるほど所要C/Nが高くなるので、上のほうの変調は受信環境が良いことが前提になり、4K放送の想定例では256QAM-NUCが使われています。

ケーブルテレビの伝送でもQAMが使われ、64QAMや256QAMが選ばれます。同軸の閉じた伝送路は屋外の電波より条件が安定しているため、地上波より多値の変調を使えます。

放送以外では、無線LANや携帯電話、マイクロ波の固定回線が同じ方式を使います。回線の状態が良いときは256QAMや1024QAMのような高い多値で速度を稼ぎ、条件が悪化すると自動で下げる制御が一般的です。

QAMの仕組み

QAMは、同じ周波数の搬送波を2つ用意し、位相を90度ずらして使います。一方をI、もう一方をQと呼び、それぞれの振幅の組み合わせで1つの信号点を表します。IとQを直交する2軸と見ると、信号点は平面上の格子に並びます。この図がコンスタレーションです。

16QAMなら信号点は16個で、1つの点が4ビットに対応します。64QAMなら64個で6ビット、256QAMなら256個で8ビットです。同じシンボルの速さなら、多値にするほど運べるビットが増えます。

送る電力の平均を変えずに点の数を増やすと、点と点の間隔は狭くなります。雑音や歪みで受信した点が本来の位置からずれたとき、隣の点と間違える確率が上がるという関係です。だから多値にするほど高いC/Nが必要になり、必要な値を下回るとビット誤り率が急に悪化します。

多値化とC/Nの関係で間違えやすい点

電波の強さ(受信レベル)だけ見て判断すると読み違えます。アンテナレベルの表示が十分でも、同一チャンネル干渉やマルチパス、増幅器の歪みでコンスタレーションの点がにじんでいれば、誤りは増えます。受信の調査でMERやBERを測るのは、レベルでは見えない劣化を見るためです。

多値の選び方は、運べる量と届く範囲の折り合いで決まります。誤り訂正の符号化率を緩めれば同じ変調でも頑丈になり、その分だけ運べるビットは減ります。地上デジタル放送で理論上の最大値どおりのビットレートが使われていないのは、この折り合いを実際の受信環境に合わせているためです。

デジタルの伝送は、劣化が画質の低下として少しずつ現れません。C/Nがある値を下回った途端に画面が固まり、そこから先は何も映らなくなります。アナログ時代の「ノイズは入るが見える」という感覚は当てはまりません。

よくある質問

64QAMと16QAMはどちらが良いのですか

条件によります。64QAMは1シンボルで6ビットを運べるので伝送量が多く、16QAMは4ビットに減るかわりに雑音に強くなります。届かせたい範囲が広い、受信環境が悪いという場面では、あえて低い多値を選びます。

QAMとOFDMの関係が分かりません

役割が違う技術で、組み合わせて使います。OFDMが帯域を多数のサブキャリアに分ける枠組みで、QAMはその1本1本のキャリアにビットを載せる方法です。地上デジタル放送は、OFDMの各キャリアを64QAMで変調しています。

コンスタレーションの点がにじんでいると何が起きますか

点のずれが大きくなるほどビット誤りが増え、誤り訂正の限界を超えるとブロックノイズや受信不能になります。にじみ方には傾向があり、全体がぼやけるなら雑音、円周方向に広がるなら位相の揺れ、といった切り分けの手がかりになります。

似ている形式との違い

名前主に使う場面QAMとの違い
QPSK雑音に強い伝送位相の4状態だけを使う方式で1シンボル2ビット。振幅を使わないため雑音や増幅の歪みに強い
OFDM帯域の分割多数のサブキャリアに分ける枠組み。QAMはその1本1本の変調方法で、役割が違う
8VSB北米の第1世代の地上デジタル振幅の8段階と残留側波帯を使う単一搬送波の方式。QAMのようにIとQを独立に使わない

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