OFDM

Orthogonal Frequency Division Multiplexing / オーエフディーエム

1つのチャンネルの中に多数のサブキャリアを並べ、それぞれを低い速度で変調してデータを運ぶ方式です。反射波に強く、日本の地上デジタル放送やDVB-T、DABなど地上波のデジタル放送で広く使われています。

正式名称
Orthogonal Frequency Division Multiplexing(直交周波数分割多重)
考え方
多数のサブキャリアに分け、それぞれを低い速度で変調して並列に送る
実装
送信側はIFFT、受信側はFFTで一括して処理する
ガードインターバル
シンボルの後ろを先頭に複製して付け、遅れて届く波の影響を吸収する
ISDB-Tのセグメント
6MHzを14分割した幅(約428.57kHz)のセグメントを13本並べる
ISDB-Tのモード
モード1〜3。全キャリア数1405/2809/5617
ISDB-Tのキャリア変調
DQPSK、QPSK、16QAM、64QAM(ARIB STD-B31)
ISDB-Tのガードインターバル比
1/4、1/8、1/16、1/32
採用している主な方式
ISDB-T、DVB-T/T2、DAB、ATSC 3.0

地上デジタル放送の資料に必ず出てくるのに、式が並んでいて何が起きているのか掴みにくいのがOFDMです。要点は2つで、1本の速い信号を多数の遅い信号に分けて並べること、そしてシンボルの間に余白を作って反射波を無害にすることです。この2つが、ビル街や山間部でも映る理由になっています。

OFDMが使われる場面

放送で出会うのは、まず地上デジタル放送です。日本のISDB-Tは6MHzのチャンネルを14分割した幅のセグメントを13本並べ、セグメント単位で最大3つの階層に分けて送ります。中央の1セグメントをワンセグに割り当てる運用が広く行われているのは、このセグメント構造があるためです。欧州のDVB-TやDVB-T2、デジタルラジオのDAB、北米のATSC 3.0も同じくOFDMです。

現場で意識するのは、送信所と中継局、受信の設計の側です。送信機の出力や送信スペクトルの管理、同じ周波数の中継局を並べる単一周波数ネットワーク(SFN)の設計、受信点でのC/NやMER、BERの測定などが、OFDMの性質を前提に組まれています。制作や編集の工程でOFDMを扱う場面はほとんどありません。

放送以外では、Wi-FiやLTE、5Gもサブキャリアに分けて送る方式です。無線LANのアクセスポイントの仕様表に「OFDM」と書かれているのは、同じ考え方が使われているためです。

OFDMの仕組み

1本の搬送波で高速にデータを送ると、1シンボルの時間が短くなります。時間が短いほど、反射で遅れて届いた波が次のシンボルに重なり、符号間干渉として現れます。OFDMは搬送波を多数に分け、1本あたりの速度を落としてシンボルの時間を長く取ります。ISDB-Tのモード3では、キャリアの間隔が約0.99206kHzで、全部で5617本のキャリアが並びます。

サブキャリアの間隔は、隣どうしが互いに干渉しない値に決められています。この関係を直交と呼び、周波数の上で重なって見えても、受信側は目的のキャリアだけを取り出せます。送信側はIFFT、受信側はFFTで、数千本のキャリアをまとめて処理します。

キャリアの中には、データではなく既知の信号を載せたパイロットが混ざっています。受信機はこれを基準に、伝送路で受けた振幅と位相の変化を推定して補正します。

各キャリアに載せる変調を多値にすると運べるデータは増えますが、その分だけ所要C/Nが上がります。総務省の検討で伝送容量を比べるときに現行方式と同じサービスエリアを確保した場合という条件が置かれるのはこのためで、送信出力を変えなければ、所要C/Nの上昇はサービスエリアの縮小として現れます。

ガードインターバルとSFN

各シンボルの前には、ガードインターバルという余白が付きます。中身はそのシンボルの後ろの部分の複製で、遅れて届いた波がこの余白の中に収まる限り、次のシンボルを汚しません。ISDB-Tでは比率を1/4から1/32まで4通りから選び、長いほど反射に強くなる代わりに、運べるデータは減ります。

この性質があるため、同じ周波数で親局と中継局を並べられます。受信点に両方の電波が届いても、時間差がガードインターバルに収まっていれば干渉になりません。SFNの設計では、この時間差が収まるように送信タイミングを調整します。

弱点もあります。多数のキャリアの位相が重なると瞬間的に大きな尖頭電力が出るため、送信の増幅器に高い直線性が求められ、電力の効率は単一搬送波より落ちます。送信所の設備が大きくなる理由の1つです。

よくある質問

OFDMとQAMは何が違いますか

OFDMは、帯域を多数のサブキャリアに分けて並列に送る枠組みです。QAMは、その1本1本のキャリアにビットを載せる変調の方法です。地上デジタル放送は、OFDMの各キャリアを64QAMなどで変調しているので、両方が同時に使われています。

ガードインターバルを長くすると何が変わりますか

遅れて届く反射波や、SFNの遠い中継局の電波に強くなります。そのかわり、同じ時間で送れるデータが減るため、運べるビットレートが下がります。地形や中継局の配置に合わせて、どこまで縮められるかを決めます。

OFDMは衛星放送にも使われていますか

日本の衛星放送では使われていません。BS・110度CSは1本の搬送波で送る方式です。OFDMが強みを発揮するのは反射波が多い地上波で、見通しが確保される衛星回線では電力の効率が優先されます。

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似ている形式との違い

名前主に使う場面OFDMとの違い
QAM1本のサブキャリアの変調OFDMは多数の搬送波に分ける枠組み、QAMはその1本1本にビットを載せる方法。組み合わせて使う
8VSB北米の第1世代の地上デジタル1本の搬送波で送る単一搬送波方式。反射波の多い都市部では等化が難しい
ISDB-T日本の地上デジタル放送方式OFDMを使った放送方式の名前。セグメント分割と階層伝送を加えた形で使っている

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