HDCAM
エイチディーカム
ソニーが1997年に発売した、1/2インチのテープにハイビジョン映像を記録する業務用VTRの規格です。1440×1080・3:1:1の映像を約144Mbpsに圧縮して記録し、ファイル化が進む前の日本の番組納品やマスター保存で広く使われました。
- 開発
- ソニー(1997年)
- 規格
- SMPTE 367M(D-11)
- 記録媒体
- 1/2インチ磁気テープ(小型のSと大型のLの2サイズ)
- 映像
- 1440×1080、3:1:1、8bit
- 圧縮
- DCTによるフレーム内圧縮、約144Mbps
- 音声
- 4ch、20bit/48kHz
- 最長記録時間
- Sカセット40分、Lカセット124分
- 現在の状況
- ソニーはVTRとカムコーダーの販売を2016年3月末で終了。保守サービスは2023年3月末まで
倉庫の棚からHDCAMのテープが何十本も出てきて、中身を確かめたいのに再生できる機械が見つからない。いまHDCAMという言葉を調べる人の多くは、この状況にいます。ソニーはHDCAMのVTRの販売を2016年に終えており、デッキそのものが年々手に入りにくくなっています。
HDCAMが使われていた場面
HDCAMは、日本の放送がハイビジョンへ移る時期の業務用VTRの主力でした。2000年代から2010年代の前半にかけて、番組の完パケをHDCAMのテープで局に搬入するのが一般的で、「HDCAMで納品」は制作会社と局の間の共通語でした。
撮影でも、HDCAMのカムコーダーが報道やドキュメンタリー、ドラマに使われました。2000年に登場した、24pで記録できるHDW-F900は、「スター・ウォーズ エピソード2」の撮影に使われたことでも知られています。完成した番組や素材は、テープのまま局や制作会社の保管庫に積まれ、それがいまのアーカイブ化の対象になっています。
ファイルでの納品が広がるにつれて、搬入の標準はXDCAM HD422のディスクやファイルに移りました。
HDCAMテープをデジタル化するとき
HDCAMのテープをファイルにするには、HDCAMを再生できるVTRと、SDIの入力を持つキャプチャー機器が必要です。VTRのHD-SDIの出力を、Blackmagic DesignやAJAのキャプチャーカードで受け、ProRes 422 HQやXDCAM HD422のMXFとして記録する構成が一般的です。
作業で気を付けたい点は次の通りです。
- VTRをRS-422で制御して取り込むと、テープのタイムコードをファイルに引き継げる
- 音声は4chあるので、キャプチャー側で4ch以上を受ける設定にしておく
- 長く保管したテープは、再生の前にクリーニングや巻き戻しを一度通すと、ヘッドの詰まりや画の乱れを減らせる
保守サービスは2023年3月末で終わっているため、手元のVTRが壊れると修理は難しくなります。本数が多いなら、デッキが動くうちに計画を立てて一気に進めるのが現実的です。取り込んだファイルは、LTOのテープや複数の拠点のストレージに分けて保管します。
HDCAMの画質と仕組み
HDCAMは、フルHDの1920画素を横に1440画素まで間引き、色の情報も3:1:1に減らしてから、フレームごとに圧縮して記録します。再生のときには1920×1080に戻して出力するので、見た目はハイビジョンですが、現在のフルHDの形式と比べると、細かい文字や色の輪郭で情報が少ないのが分かります。
この弱点を補うため、映画やドラマのマスター向けには、フル解像度・10bitで記録する上位のHDCAM SRが使われました。
よくある質問
HDCAMのテープを再生するには何が必要ですか
HDCAMに対応したVTR(HDW-M2000などのHDWシリーズ)が必要です。家庭用のビデオデッキやDigital Betacam専用のデッキでは再生できません。パソコンに取り込むには、さらにHD-SDIのキャプチャー機器を用意します。
HDCAMの画質はフルHDですか
出力は1920×1080ですが、テープには1440×1080で記録されています。色の情報も間引かれているため、現在のフルHDのファイル形式と同じ情報量ではありません。
HDCAMとHDCAM SRの違いは何ですか
HDCAM SRは上位の規格で、フル解像度の10bit、最大12chの音声で記録できます。HDCAMは主に放送の番組納品に、HDCAM SRは映画やドラマのマスターに使われました。
この用語を扱ったコラム
似ている形式との違い
| 名前 | 主に使う場面 | HDCAMとの違い |
|---|---|---|
| HDCAM SR | 映画・ドラマのマスター | HDCAMの上位規格。10bitのフル解像度で記録し、音声も12chまで持てる |
| XDCAM HD422 | ファイルでの番組納品 | HDCAMに代わって納品の標準になった形式。ディスクやファイルで受け渡す |
| DVCPRO HD | パナソニック系のHD収録 | 同じ時代のパナソニックの業務用HD規格。1/4インチのテープやP2カードに100Mbpsで記録する |
関連する用語
最終更新
