信号・規格収録編集納品送出配信

HDR

High Dynamic Range / エイチディーアール

従来のSDRよりも明るい部分と暗い部分の幅を大きく取り、光の輝きや夜景を現実に近い明るさで表示する映像の方式です。PQとHLGの2つの方式があり、ITU-R BT.2100で規格化されています。

規格
ITU-R BT.2100(PQとHLGを定義)
明るさの方式
PQ(SMPTE ST 2084)、HLG(ARIB STD-B67)
主なフォーマット
HDR10、HDR10+、Dolby Vision、HLG
色域
BT.2020
ビット深度
10bit以上
基準白の明るさ
SDRは100cd/m²前後。HDRはITU-R BT.2408で203cd/m²

HDRと一口に言っても、中身はPQとHLGという性格の違う2つの方式に分かれ、その上にHDR10やDolby Visionといったフォーマットの名前が重なっています。どれで作るかは、映像の行き先でほぼ決まります。

HDR映像が使われる場面

放送では、新4K8K衛星放送のHDR番組がHLGで制作されています。生中継でもそのまま送れることが、放送で選ばれた理由です。

動画配信では、Netflix、Amazon Prime Video、Apple TV+などがHDR作品を配信しており、制作側にはPQを使うDolby VisionやHDR10での納品が求められます。UHD Blu-rayはHDR10が必須のフォーマットで、Dolby VisionやHDR10+を追加で収録するディスクもあります。

身近なところでは、iPhone 12以降のiPhoneがHDR動画を記録できます。YouTubeもHDR動画のアップロードに対応しており、HDR非対応の端末にはSDRに変換した版を配信します。

制作の現場では、HDRのグレーディングにソニーのBVM-HX310のような、ピーク輝度1,000cd/m²クラスのマスターモニターが使われます。普通のパソコンのモニターはSDRなので、HDRの仕上がりを判断する道具にはなりません。

HDRの仕組み(PQとHLGの違い)

SDRは、明るさの上限を100cd/m²前後の白に置いて、それより明るいものは白に張り付かせてきました。HDRはこの上限を大きく引き上げ、太陽の照り返しや照明の光源を、白い紙より明るいものとして表現できます。そのための明るさの変換カーブが、PQとHLGの2通りです。

項目

PQ

HLG

規格

SMPTE ST 2084

ARIB STD-B67

信号の意味

絶対的な明るさ(cd/m²)

表示機器に対する相対的な明るさ

上限

10,000cd/m²

表示機器の性能に合わせる

メタデータ

使う(HDR10、Dolby Vision)

使わない

SDRのテレビでの表示

そのままでは正しく映らない

ある程度そのまま映る

主な用途

配信、UHD Blu-ray、映画

放送、生中継

どちらも色域はBT.2020を使い、ビット深度は10bit以上が前提です。

HDR制作で間違えやすい点

HDRの仕事で起きやすい失敗は次の通りです。

  • 8bitで書き出してしまい、空や壁のグラデーションに縞が出る。HDRはHEVCのMain10やProResのような10bit以上の形式で書き出す
  • SDR版の確認を省く。多くの納品ではHDRとSDRの両方が求められ、Dolby Visionならトリムの調整、HLGならSDR表示での見え方の確認が要る
  • テロップや字幕の白を信号の上限近くに置き、HDRのテレビでまぶしくなる。ITU-R BT.2408は、白い紙やグラフィックの白にあたる基準白を203cd/m²としている
  • 書き出し時にメタデータや色の情報が抜け、テレビ側がSDRとして扱ってしまう

撮影素材の段階では、Log撮影で広い明暗を残しておくと、HDRとSDRの両方を後から作りやすくなります。

よくある質問

HDRとSDRの違いは何ですか

表示できる明るさの幅と色域の広さが違います。SDRはBT.709の色域で白を100cd/m²前後に置き、HDRはBT.2020の色域で、それより明るい光を段階を保ったまま表現できます。

HDRの動画をSDRのテレビで見るとどうなりますか

方式によって変わります。HLGはSDRのテレビでもある程度自然に映りますが、PQの映像をそのまま映すと、コントラストの低いくすんだ絵になります。配信サービスは端末に合わせてSDR版を送り分けています。

HDR10とDolby Visionはどちらを選べばよいですか

納品先の指定に従うのが基本です。配信大手はDolby Visionでの納品を求めることが多く、そこからHDR10の版を作れます。違いはDolby Visionの項目で詳しく扱っています。

似ている形式との違い

名前主に使う場面HDRとの違い
SDR地上波のHD放送・一般的なWeb動画従来の方式。BT.709の色域で、基準の白を100cd/m²前後に置く
HDR10UHD Blu-ray・配信HDRの中の1フォーマット。PQに作品全体で1組のメタデータを付けたもの
Log撮影撮影時の記録広い明暗を記録するための撮影側の方法。HDRは表示までを含めた方式

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