HDR10
エイチディーアールテン
PQの明るさのカーブ、BT.2020の色域、10bitの量子化に、作品全体で1組の静的メタデータを付けたHDRフォーマットです。UHD Blu-rayで必須とされ、HDR対応のテレビや配信で最も広く再生できます。
- 定義
- 2015年8月に米国のCEA(現在のCTA、全米民生技術協会)がHDR10 Media Profileとして発表
- 明るさのカーブ
- PQ(SMPTE ST 2084)
- 色域
- BT.2020
- ビット深度
- 10bit
- メタデータ
- 静的。SMPTE ST 2086(マスターモニターの特性)、MaxCLL、MaxFALL
- 主な用途
- UHD Blu-ray、動画配信、家庭用ゲーム機
- ライセンス料
- 不要
「HDR対応」と書かれたテレビやモニターが最低限サポートしているのが、たいていこのHDR10です。ライセンス料がかからない代わりに、明るさの情報は作品全体で1組しか持てません。
HDR10が使われる場面
UHD Blu-rayでは、HDR10が必須のHDRフォーマットです。Dolby VisionやHDR10+を収録したディスクでも、それらに対応しない再生機のためにHDR10の映像が基本として入っています。
動画配信では、Dolby Vision非対応のテレビやスマートフォンに向けて、HDR10の版が配信されます。PlayStation 5やXbox Series X|SのゲームのHDR出力もHDR10です。
制作側では、DaVinci ResolveやPremiere ProからHEVCのMain10でHDR10のファイルを書き出すのが一般的な流れです。配信大手への納品ではDolby Visionのマスターから派生させることが多く、単独でHDR10を作るのは、YouTube向けの動画や企業のHDR映像のように、Dolby Visionを求められない案件です。
HDR10の仕組み(静的メタデータ)
HDR10の映像は、PQのカーブで記録された10bitの映像に、次の3種類のメタデータを添えたものです。
- SMPTE ST 2086:色を決めたマスターモニターの3原色、白色点、最大と最小の輝度
- MaxCLL(Maximum Content Light Level):作品の中で最も明るい1画素の明るさ
- MaxFALL(Maximum Frame-Average Light Level):1フレームの平均の明るさのうち、作品中で最も高い値
テレビはこの情報を見て、自分の表示能力に収まるように明るさを縮める処理をかけます。例えば1,000cd/m²のモニターで仕上げた作品を600cd/m²しか出せないテレビで映すとき、どこまで圧縮すればよいかの判断材料になります。
ただし、このメタデータは作品全体で1組しかありません。夜のシーンも昼の屋外のシーンも同じ基準で圧縮されるため、暗いシーンが必要以上に暗くなることがあります。これを場面ごとに調整できるようにしたのが、HDR10+やDolby Visionの動的メタデータです。
HDR10の書き出しで間違えやすい点
書き出しでつまずきやすいのは次の点です。
- H.264の8bitで書き出してしまう。HDR10は10bitが条件なので、HEVCのMain10などを使う
- マスタリングディスプレイの情報やMaxCLL・MaxFALLを空欄のまま書き出す。テレビが既定の値で処理するため、意図より暗く、または明るく見えることがある
- 色の情報の組み合わせを誤る。色域はBT.2020、伝達特性はPQ、変換係数はBT.2020の3つがそろってはじめてHDR10として認識される
書き出したファイルは、MediaInfoで「HDR format」の欄にSMPTE ST 2086やHDR10の表記が出ているか確かめておくと確実です。
よくある質問
HDR10とHDRは何が違いますか
HDRは明るさの幅を広げた映像の方式全体を指す言葉で、HDR10はその中の具体的なフォーマットの1つです。HDRにはほかにHLG、HDR10+、Dolby Visionがあります。
HDR10の動画をHDR非対応のテレビで再生するとどうなりますか
変換機能の無い機器では、PQの信号がSDRとして表示され、白っぽくくすんだ絵になります。配信サービスは端末の対応状況を見てSDR版を送るので、視聴者側でこの問題が起きることはあまりありません。
HDR10に対応していればDolby Visionの作品も見られますか
Dolby Visionとしては再生できませんが、HDR10互換の層を持つ作品なら、HDR10として表示されます。UHD Blu-rayのDolby Vision作品はこの形です。配信サービスは、多くの場合HDR10の版を別に用意して端末ごとに送り分けています。
似ている形式との違い
| 名前 | 主に使う場面 | HDR10との違い |
|---|---|---|
| HDR10+ | 配信・一部のテレビ | HDR10にシーンごとの動的メタデータ(SMPTE ST 2094-40)を足したもの。Samsungが提唱した |
| Dolby Vision | 配信大手の納品・映画 | ショットごとの動的メタデータを持ち、12bitまで扱える。Dolbyのライセンスが要る |
| HLG | 放送・生中継 | メタデータを使わないHDR方式。明るさを相対値で扱う |
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