PQ
Perceptual Quantizer / ピーキュー
人の目の明るさの感じ方に合わせて信号値を割り当てた、HDR用の明るさの変換カーブです。信号値ごとに0〜10,000cd/m²の絶対的な明るさが決まっており、HDR10やDolby Visionの土台になっています。
- 正式名称
- Perceptual Quantizer
- 規格
- SMPTE ST 2084(2014年)、ITU-R BT.2100
- 開発
- Dolby
- 扱える明るさ
- 0〜10,000cd/m²
- 信号の意味
- 表示する明るさそのもの(ディスプレイ基準)
- 使うフォーマット
- HDR10、HDR10+、Dolby Vision
- ファイル上の識別
- 伝達特性(transfer characteristics)の値16
PQで作られたHDR映像は、信号の値そのものが「何cd/m²で光らせるか」を指しています。同じファイルなのに、モニターやテレビによって見え方が大きく変わるのは、この性質から来ています。
PQが使われる場面
映画や配信ドラマのHDRグレーディングは、ほとんどがPQで行われます。NetflixやAmazon Prime Videoに納めるDolby VisionやHDR10のマスターはPQで、ピーク輝度1,000cd/m²のマスターモニターで色を決めるのが一般的です。UHD Blu-rayのHDR10もPQです。
DaVinci Resolveでは、カラーマネジメントの出力の色空間で「ST.2084 1000 nit」のように、使っているモニターのピーク輝度に合わせた設定を選びます。Apple製品ではPro Display XDRや、HDR表示に対応したMacBook Proの画面でPQの映像を確認できます。
PQの仕組み
PQは、人の目が暗い部分の明るさの差に敏感で、明るい部分の差には鈍いという性質を元に作られています。そのため、暗い側に多くの信号値を割り当て、明るい側ほど粗く刻みます。
信号の割り当ては、おおよそ次の通りです。
信号値の位置 | 表す明るさ |
|---|---|
約51% | 100cd/m²(SDRの白に相当) |
約58% | 203cd/m²(HDRの基準白) |
約75% | 1,000cd/m² |
100% | 10,000cd/m² |
信号の半分を使ってもまだSDRの白の明るさにしかならず、残りの半分をハイライトに使う作りです。縞がまったく見えない条件を満たすには12bitが必要とされますが、配信やUHD Blu-rayでは10bitで0〜10,000cd/m²を刻んで実用にしています。
PQの信号は絶対的な明るさを指すので、表示するテレビが作品の最大輝度を出せない場合は、テレビ側で明るさを縮めて収める処理(トーンマッピング)が必要になります。その判断材料として、HDR10は作品全体で1組の静的メタデータを、Dolby Visionはショットごとの動的メタデータを添えます。
PQの運用で間違えやすい点
PQの映像を扱うときの注意点は次の通りです。
- モニターのピーク輝度を超えるハイライトは、グレーディング中に見えない。マスターモニターの上限と出力設定をそろえ、それを超える部分を作らないようにする
- 視聴環境の前提がある。PQは暗い部屋で見ることを想定しているため、明るい部屋で見ると暗部がつぶれて見える
- ファイルの伝達特性の情報が抜けると、再生側がPQと認識できない。MediaInfoでTransfer characteristicsがPQになっているか確認する
- PQの信号をSDRとして表示すると、コントラストの低いくすんだ絵になる。SDR版は変換して別に作る
グレーディングで色を作る工程そのものは、カラーグレーディングの項目で扱っています。
よくある質問
PQとHLGはどちらを使えばよいですか
配信や映画、UHD Blu-rayの納品ならPQ、放送や生中継ならHLGが基本です。行き先の納品仕様書に書かれている方式に合わせます。
PQの10,000cd/m²を表示できるテレビはありますか
市販のテレビのピーク輝度は10,000cd/m²より大幅に低く、テレビ側のトーンマッピングで収めて表示しています。10,000cd/m²は将来の表示機器まで見越した規格上の上限です。
HDR10とPQは同じものですか
同じではありません。PQは明るさの変換カーブの名前で、HDR10はPQにBT.2020の色域、10bit、静的メタデータの決まりを組み合わせたフォーマットの名前です。
似ている形式との違い
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