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現用系・予備系

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放送設備を二重以上に用意し、ふだん放送に出している側を現用系、故障のときに代わる側を予備系と呼ぶ構成です。切り替えの速さで、ホットスタンバイやコールドスタンバイ、N+1などの組み方が分かれます。

現用系
実際に放送に出ている側の系統。「げんようけい」と読む
予備系
待機して現用系の故障時に代わる側の系統。「予備」「B系」などとも呼ぶ
ホットスタンバイ
予備系も同じ入力で動かし続け、出力を切り替えるだけで済む構成
コールドスタンバイ
予備系は停止または待機状態で、故障時に立ち上げてから使う構成
N+1
N台の現用機に対して予備機を1台持ち、どの1台の故障にも同じ予備機で代わる構成
切り替えの契機
自動切り替え(装置が異常を検知)と手動切り替え(監視の担当者が判断)
IP伝送での冗長化
SMPTE ST 2022-7で同じストリームを2経路に流し、受信側でパケット単位に合成する
二重化の対象
装置、電源、回線、ネットワーク、空調、局舎そのもの

放送設備の図面を見ると、同じ装置が2台並んで描かれ、片方にA系、片方にB系と書かれています。放送は止められないので、1台壊れたら代わりが要るという単純な理屈です。難しいのは台数ではなく、いつ、何を契機に、どれくらいの速さで切り替えるかの設計です。

現用系・予備系が使われる場面

もっとも徹底されているのがマスターから送信所までの経路です。送出サーバー、マスタースイッチャー、エンコーダー、多重化装置、STLの送信装置まで、放送本線に関わる装置はほぼ二重化されます。電源も系統を分け、無停電電源装置と非常用発電機を組み合わせます。

中継やライブ伝送でも同じ考え方を使います。同じ映像を2本の回線で送り、受信側で健全な方を使う構成が基本です。IP伝送ではSMPTE ST 2022-7が、2つの経路に同じパケットを流し、受信側でシーケンス番号をもとに1本にまとめる方式を定めています。片方の経路が落ちても映像が途切れません。

配信側でも考え方は引き継がれます。エンコーダーを2系統立て、パッケージャとCDNを複数用意し、片方に障害が出たら再生を別系に寄せます。放送との違いは、視聴者側のプレイヤーが再試行してくれる余地がある点で、切り替えに許される時間はやや長くなります。

現用系・予備系の組み方の違い

同じ二重化でも、予備系をどこまで温めておくかで性格が変わります。組み方の代表は次の通りです。

  • ホットスタンバイは、予備系にも同じ入力を入れて動かし続け、出力の切り替えだけで代わる構成です。切り替えが速く、放送本線に使われます。
  • コールドスタンバイは、予備系を止めた状態で置いておき、故障してから立ち上げます。安く済みますが、復旧までに分単位の時間がかかります。
  • N+1は、N台の現用機に対して予備機を1台だけ持つ構成です。どの1台が壊れても同じ予備機が代わるので、台数の多い装置に向きます。エンコーダーやトランスコーダーの群でよく使われます。
  • 二重化した系をそれぞれ別の部屋や別の建物に置く構成もあります。装置の故障ではなく、火災や水漏れ、局舎の被災に備える考え方です。

切り替えの契機も設計項目です。装置が自分の異常を検知して自動で切り替える方式は速い反面、誤検知で健全な系から離れる危険があります。監視の担当者が判断して手で切り替える方式は確実ですが、気付くまでの時間がかかります。実際には、明確な故障は自動、判断の要る劣化は手動という形で使い分けられます。

現用系・予備系で間違えやすい点

二重化してあるのに切り替わらなかった、という事故が起きる理由はいくつかあります。よくあるのは、予備系が長く使われていないうちに設定が現用系とずれていたケースです。運行データの更新、ソフトウェアの版、ライセンスの期限が現用系にしか当たっておらず、切り替えた瞬間に別の障害が出ます。定期的に予備系へ切り替えて実際に放送を通す試験が欠かせません。

もう1つは、二重化したつもりが1点で繋がっているケースです。A系とB系が同じ電源盤、同じネットワークスイッチ、同じ空調、同じ回線事業者の同じ経路を通っていると、その1点が落ちたときに両系が同時に止まります。図面の上では分かれて見えるので、配線と契約まで追って確かめる作業が必要です。

切り替えた瞬間の映像の乱れも設計対象です。系を切り替えると同期がずれ、画面が飛ぶことがあります。ゲンロックを共通にし、フレームシンクロナイザを入れて乱れを抑えるのが一般的な対策です。切り替え時に何フレーム乱れるのかを、あらかじめ確かめておきます。

よくある質問

現用系は「げんようけい」と読みますか

放送や電力の現場では「げんようけい」と読みます。実際に使っている側という意味で、対になるのが予備系です。図面や卓の表示ではA系・B系、1系・2系と書かれることも多く、同じものを指しています。

ホットスタンバイとコールドスタンバイはどちらを選ぶべきですか

止まってはいけない時間の長さで決まります。放送本線のように秒単位でも止められない場所はホットスタンバイ、復旧に数分かけられる周辺の装置はコールドスタンバイで足ります。費用は予備系を動かし続けるぶんホットスタンバイのほうが高くなります。

クラウドの冗長化は放送設備の冗長化と同じ考え方ですか

考え方は同じですが、対象が変わります。クラウドでは装置単位ではなく、可用性ゾーンやリージョン、インスタンスの群として二重化します。切り替えに要する時間が秒単位から分単位になることがあるため、放送本線に使うなら送出監視と合わせて許容できる時間を確かめておく必要があります。

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名前主に使う場面現用系・予備系との違い
SMPTE ST 2022-7IP伝送の経路の冗長化経路を二重にして受信側で1本にまとめる規格。装置単位の現用・予備の切り替えとは層が違う
フレームシンクロナイザ信号の同期合わせ系を切り替えたときの映像の乱れを抑えるために使う装置。冗長構成そのものではない
バックアップデータの複製素材やデータの複製を別の場所に持つこと。現用・予備は動いている装置や経路の二重化を指す

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