フレームシンクロナイザ
frame synchronizer / フレームシンクロナイザ
局の基準信号に同期していない映像を、いったんフレームメモリに書き込み、基準に合わせて読み出し直す装置です。中継回線や他局から届く映像を、スイッチャーで乱れなく切り替えられる状態にします。
- 英語表記
- frame synchronizer(FS、フレームシンク)
- 役割
- 非同期の映像をフレームメモリ経由で局の基準信号に同期させる
- 遅延
- 1〜2フレーム程度
- 置く場所
- 中継回線、他局からのネット回線、外部から持ち込まれた機材の入口
- 基準信号
- ブラックバースト、3値シンク。IP設備ではPTP
- よく一緒に付く機能
- プロセスアンプによる映像調整、フォーマット変換、音声の遅延合わせ
- 内蔵している機器
- 一部のスイッチャーの入力、コンバーター、ルーティングスイッチャーの同期オプション
中継先から届いた映像をスイッチャーに直接入れて切り替えると、切り替わりの瞬間に画面が横に飛んだり、フレームの途中で別のフレームが割り込んだように乱れます。送り元が局の基準信号を知らないため、フレームの頭の位置が合っていないからです。フレームシンクロナイザは、この映像を局の時間軸に載せ替える装置です。
フレームシンクロナイザが使われる場面
放送局では、外から入ってくる映像の入口に必ず置かれます。中継車からの回線、系列局やキー局から届くネット回線、記者が持ち帰った素材を再生する機材、衛星やインターネット経由で受けた映像などが対象です。これらは送り元が別の設備で動いているため、局の基準信号には同期していません。マスターやサブの入力段で同期させてから、スイッチャーへ回します。
ライブイベントや配信の現場でも同じ必要が生じます。会場に持ち込まれた複数のパソコンやメディアプレーヤー、レンタル機材は基準信号を受けられないものが多いので、入力側でフレーム同期をかけます。スイッチャーの機種によっては入力ごとにフレームシンクロナイザを内蔵していて、非同期の信号をそのまま受けられます。
コンバーターの製品にも同じ機能が入っています。解像度やフレームレートの変換を行う機材は、内部でフレームメモリを使うので、結果として同期の機能も持っていることが多いです。
フレームシンクロナイザの仕組み
動きは単純です。入ってきた映像を1フレーム分のメモリに書き込み、局の基準信号のタイミングで読み出します。書き込みは送り元の速さで、読み出しは局の速さで行われるので、出てくる映像は局の基準にそろいます。読み出しに使うのは局内の安定した同期信号なので、送り元の時間軸の揺れも吸収されます。この処理の代償として、1〜2フレーム程度の遅延が加わります。
送り元と局のフレームレートがわずかに違うと、メモリの読み書きの位置が少しずつずれていきます。追いつかれると同じフレームを2回読み出し、追い越すと1フレーム飛ばします。数分から数十分に1回、映像が一瞬止まったりカクついたりする症状が出るのは、この繰り込みや読み飛ばしです。異常ではなく、非同期の信号を受ける限り避けられない動作です。
多くの製品には、プロセスアンプによる輝度や色の調整、音声の遅延合わせが付いています。映像に遅延が加わるので、音声も同じだけ遅らせないと口の動きと声がずれます。
ゲンロックとの違いと置き場所
どちらもタイミングをそろえる仕組みですが、手の入れ方が逆です。ゲンロックは、機器に基準信号を入れて、機器自身が基準に合わせて出力するようにします。局内のカメラやサーバーのように、自分が管理している機材にはこの方法を使います。
送り元が別の会社や別の設備で、基準信号を渡せない相手には使えません。そこで、届いた映像を受け側で作り直すのがフレームシンクロナイザです。置き場所は必ず外部信号の入口で、ここを通した後は局内のどの機器へも回せます。基準信号には3値シンクやブラックバーストを使います。
IP設備では役割の見え方が変わります。SMPTE ST 2110ではPTPで配った時刻を基準に受け手が並べ直すので、同期の処理が装置の中に溶け込みます。それでも外部から来る映像を局の時刻に載せ替える処理は必要で、IPゲートウェイの機器がその役目を持ちます。
よくある質問
フレームシンクロナイザを通すとどれくらい遅れますか
1〜2フレーム程度が一般的です。59.94Hzの映像なら、1フレームで約16.7ミリ秒です。フォーマット変換を同時に行う機材では、さらに増えることがあります。音声も同じだけ遅らせて合わせます。
ゲンロックできる機材にもフレームシンクロナイザは必要ですか
基準信号を渡せてロックできているなら、不要です。フレームシンクロナイザが要るのは、送り元に基準信号を渡せない場合です。ただしロックの設定が内部同期のままになっている機材は同期していないので、本番前に状態の表示を確かめます。
映像が数分おきに一瞬止まるのはフレームシンクロナイザのせいですか
送り元と局のフレームレートがわずかに違う場合、同じフレームの読み出しや1フレームの飛ばしが定期的に起きます。この症状は非同期の信号を受けている証拠なので、送り元側を基準に同期させられるかどうかを先に確かめます。
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似ている形式との違い
| 名前 | 主に使う場面 | フレームシンクロナイザとの違い |
|---|---|---|
| ゲンロック | 局内機器の同期 | 機器自身に基準信号を入れてタイミングをそろえる方法。送り元を制御できないときにフレームシンクロナイザを使う |
| TBC(タイムベースコレクタ) | VTRの時間軸の補正 | 再生時の時間軸の揺れを直す装置。フレームシンクロナイザも同じ効果を持つため、機能が一体になった製品が多い |
| フォーマットコンバーター | 解像度やフレームレートの変換 | 信号の形式そのものを変える装置。フレーム同期は結果として伴うことが多いが、目的が違う |
| PTP | IP設備の時刻配信 | ネットワークで時刻を配る方式。ST 2110の受け手は時刻を基準に並べ直すため、役割が近い処理が機器の中に入る |
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