信号・規格送出配信

SMPTE ST 2038

Carriage of Ancillary Data Packets in an MPEG-2 Transport Stream / エスエムピーティーイーエスティーニーゼロサンハチ

SDIのVANCに載っていた補助データを、そのままの形でMPEG-2 TSの中の1本のストリームとして運ぶためのSMPTEの規格です。字幕やタイムコード、CM差し替えの合図を圧縮伝送の先まで届けられます。

規格番号
SMPTE ST 2038
正式名称
Carriage of Ancillary Data Packets in an MPEG-2 Transport Stream
版
2008年の初版と2020年の改訂版
運ぶもの
SDIのVANC/VBIに載っていたANCパケットを、DIDとSDIDを保ったままTSの1つのPIDに入れる
運べるデータの例
ARIB字幕(STD-B37)、SMPTE 334のEIA-608/CEA-708字幕、OP-47テレテキスト(SMPTE RDD-08)、SMPTE 12Mタイムコード、SCTE-104、KLV(AWS Elemental MediaLiveが取り出せるものとして挙げている範囲)
MXFでの相当する規格
SMPTE ST 436
IP設備での相当する規格
SMPTE ST 2110-40

SDIをそのままエンコードして配信に回すと、映像と音声は残るのに字幕やタイムコードだけが消えることがあります。これらは画面に映らないVANCの区間に載っているため、圧縮の段階で捨てられてしまうからです。ST 2038は、その区間のデータをTSの中に別のストリームとして残すための規格です。

ST 2038が使われる場面

放送局から配信基盤へ番組を渡す経路でよく使われます。送出のSDIをエンコーダーに入れ、SRTやRTPでTSとして送るとき、ST 2038のストリームを1本立てておけば、受け側で字幕やタイムコードを取り出せます。AWS Elemental MediaLiveのように、入力のST 2038から必要なデータだけを抜き出して出力の形式に組み直す機能を持つ機器やサービスもあります。

日本の現場で効いてくるのはARIB STD-B37の字幕です。放送波に乗る字幕はVANCの中を通って送出まで運ばれるので、そこから先の伝送でも同じデータをそのまま持ち回れると、字幕を作り直さずに済みます。MediaLiveのドキュメントでも、ST 2038から取り出せるものとしてARIB字幕(STD-B37の2.4版に準拠したもの)が挙げられています。

局間の素材伝送や、系列局へのネット送出でも同じ考え方で使われます。映像と音声だけを送って字幕を別便にすると、タイミングを合わせ直す作業が発生します。

ST 2038の仕組み

SDIのVANCに入っているANCパケットは、DIDとSDIDという2バイトの識別子で「これは字幕」「これはタイムコード」と区別されています。ST 2038はその識別子と中身をほぼそのままの形でTSのパケットに詰め直し、1つのPIDのストリームとして流します。中身を解釈して作り替えるわけではないので、規格側でデータの種類を限定していないのが特徴です。新しい種類のANCが増えても、運ぶ側の仕組みは変わりません。

ファイルの世界で同じ役目を果たすのがSMPTE ST 436です。こちらはMXFの中にANCデータのトラックを作ります。IP設備ではST 2110-40が、ANCデータを映像や音声とは別のRTPストリームとして運びます。載せる先が違うだけで、VANCの中身を保ったまま運ぶという発想は3つとも共通しています。

ST 2038で間違えやすい点

  • 2038のストリームをPMTに載せていない。受け側がPIDを見つけられず、データが流れていても取り出せない
  • 途中でPIDが変わる設計にしている。PIDの変更に追従しない受け側の実装があるため、同じPIDで通し続ける作りにする
  • 1つのTSの中に2038のストリームを複数のPIDで入れている。どちらが使われるかが受け側の実装に委ねられる
  • 送り出し側のSDIに、そもそも目的のANCが載っていない。VANCの中身はMXFやSDIの検査ツールで先に確認する
  • 受け側が必要な形式に組み直せない。2038で運べていても、最終的にWeb配信の字幕にするならCEA-708やWebVTTへの変換が別途必要になる

VANCの中に何が入っているかという話はMXFファイルとは?中身の構造と放送で使われる理由でも扱っています。

よくある質問

SMPTE 2038とSMPTE 436の違いは何ですか

運ぶ中身は同じVANCの補助データですが、入れる先が違います。2038はMPEG-2 TSの中の1本のストリームとして、436はMXFファイルの中のトラックとして持ちます。伝送の途中が2038、ファイルで保管するときが436、という使い分けになります。

ST 2038で字幕は送れますか

送れます。ARIB字幕、SMPTE 334に沿ったEIA-608/CEA-708の字幕、OP-47のテレテキストなど、VANCに載る形の字幕はそのまま運べます。ただし受け側がそのデータを取り出して使える実装であることが前提です。

ST 2038はST 2110-40と同じものですか

別の規格です。どちらもVANCのANCデータを運びますが、2038はMPEG-2 TSの中に入れる方式、2110-40はIPネットワーク上で独立したRTPストリームとして送る方式です。設備の中がST 2110、外への伝送がTSという構成では、両方が登場します。

この用語を扱ったコラム

似ている形式との違い

名前主に使う場面SMPTE ST 2038との違い
SMPTE ST 436MXFの中の補助データ同じVANCのデータをMXFファイルのトラックとして持つ規格。2038はTSの中のPIDとして持つ
SMPTE ST 2110-40IP設備での補助データANCデータを独立したRTPストリームとして送る。2038はMPEG-2 TSの中に入れる
VANCSDIの補助データ区間そもそもの載せ場所。2038はそこから取り出したANCパケットをTSへ移す
SCTE-35CM差し替えの合図TSの中で専用のPIDを使うマーカー。2038はSCTE-104のメッセージをANCの形のまま運ぶ

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